
短時間・単発の就労を内容とする雇用契約のもとで働く、いわゆる「スポットワーク」は、一時的な人手不足をカバーできるという企業側の利点と、空いている時間を使って柔軟に働きたいという働き手側の希望から、急激に利用が増加しています。
スポットワークの仲介事業者は様々なサービスを提供しているので手軽に利用ができますが、労働基準法などの法令に則った対応が必要ですので、労使トラブルに発展しないよう、労務管理上のポイントをしっかり押さえて対応していくことが求められます。
ここでは、厚生労働省が作成しているリーフレットから一部をご説明いたします。
◆労働契約の締結について
労働契約は、労働者が事業主に使用されて労働し、事業主がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び事業主が合意することによって成立します(労働契約法)。
スポットワークでは、雇用仲介用のアプリを用いて、事業主が掲載した求人にスポットワーカーが応募し、面接等をすることなく、短時間にその求人と応募がマッチングすることが一般的ですが、労働契約は事業主とスポットワーカーとが締結(直接雇用)していることに注意が必要です。
トラブルになりやすいのは、契約成立後のキャンセル等(解約・休業等)です。
労働契約の成立時期は、個別具体的な状況によりますが、面接等を経ることなく先着順で就労が決定する求人では、別途特段の合意がなければ、事業主が掲載した求人にスポットワーカーが応募した時点で労使双方の合意があったものとして労働契約が成立するものと一般的には考えられます。双方での認識に相違が出ないよう、締結前に十分な認識合わせを行うことが重要です。
契約が成立すれば、労働者の雇用となりますので、労働関係法令が適用されます。
いったん確定した労働日や労働時間等の変更は、労働条件の変更となりますので、事業主とスポットワーカーの双方の合意が必要となります。
もし労働契約成立後に事業主の都合で丸1日の休業や早上がりをさせることになった場合には、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由による」休業となるので、スポットワーカーに対して、原則、休業手当を支払う必要があります。※事業主自身の故意・過失等による休業の場合には、民法により賃金を全額支払う必要があります
◆労働者としての取り扱い
労働基準法により事業主は労働者へ労働条件の明示をすることが義務付けられています。労働条件通知書の交付は、仲介事業者が代行してくれる場合もありますが、この交付は事業主の義務ですので、記載内容の確認や確実な交付実施の確認を行う必要があります。
その他、労働災害防止のための措置(雇入れ時の安全教育等)や、ハラスメント防止措置(相談窓口の周知等)など、労働者に対して必要な措置の多くはスポットワーカーにも行う必要があります。
また、賃金台帳の作成も行わなければなりませんが、これも漏れてしまいがちです。
◆労災適用と年度更新について
雇用区分や労働時間にかかわらず労働者には「労災保険」が適用されますので、スポットワーカーが通勤中または業務中にケガをした場合にも、就労先の事業について成立する保険関係に基づき、労災保険給付を受けることができます。
また、労働保険の年度更新の際には、スポットワーカーも対象労働者として賃金の算入をする必要があります。賃金の支払いを通常の労働者とは別に管理するケースも多いと思いますので、申告漏れとならないよう注意が必要です。
スポットワーカーも通常の労働者と同様に労働者であるというご認識と、事業主としての対応が必要となりますので、トラブルにならないよう、よくご確認のうえ適切にご対応ください。
参考:厚生労働省 いわゆる「スポットワーク」の留意事項等
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59321.html
朝日社会保険労務士法人 後藤 奈緒
朝日社会保険労務士法人 社員 後藤 奈緒