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朝日だより

サーチファンドによる事業承継

2024年09月24日 士業だより

 National Search Fund株式会社の前田と申します。
再び朝日税理士法人様より寄稿の機会をいただき、心より感謝申し上げます。
今回は、前回の寄稿(2024年3月25日、URL:https://www.taxacc.jp/magazine/pc/nsf-202403/)に続き、私たちの「サーチファンド」による具体的な事業承継事例を交えながら、サーチファンドの特徴と、他社と比較した際の弊社の強みについてご紹介いたします。

 改めて、私たちの取り組みについてご紹介させていただきます。私たちは、事業承継の課題に対処し、経営人材の流動性を促進することで、中小企業の成長を支援し、日本経済を元気にすることを目指して活動しているスタートアップです。銀行、商社、リクルート、ソフトバンク、スタートアップなど、さまざまなバックグラウンドを持つメンバーが集まり、2023年3月には横浜銀行から10億円の出資を受け、「サーチファンド未来創造」を設立・運営しています。このファンドは、経営者としての資質と情熱を持った人材を発掘・育成し、地域の中小企業の事業承継を支援することを目的としています。

 2024年3月末には、2件のサーチファンドによる事業承継が実現し、さらに2024年9月末には2件の承継を予定しています。この進展に伴い、さらなる出資を受け、ファンド規模の拡大も視野に入れています。

 今回は、これらの事例を通じて、サーチファンドによる事業承継のプロセスとそのメリットについて詳しくご紹介いたします。この機会に、サーチファンドを通じた事業承継の理解を深めていただければ幸いです。

 サーチファンドの最大の特徴は、一般的なM&A(法人取引)とは異なり、人生をかけて情熱を持って挑戦する「人」に会社の未来を託すことができる点です。M&Aの成功率は半分以下とも言われていますが、その背景には、会社や事業に本気でオーナーシップを持つ人物がいないケースが多いことが挙げられます。そのため、サーチファンドによる事業承継は非常に有効な選択肢であり、サーチャーの情熱こそが成功の鍵だと考えています。

 一方で、他社のサーチファンドの事例では、サーチャーが企業の規模や業種、財務内容等を基にリストアップした企業に対し、2年という期間を設定し、その期間で多くの企業にアプローチを行っています。このプロセスでは、数十社もの経営者との面談を重ね、最終的に「選ばれる」形で承継が成立するケースも多いですが、結果として、期間内に承継に至ることができないことや、承継後にうまくいかず元の体制に戻すケースも存在します。

 弊社では、これらのプロセスを改善し、まずは、サーチャーとの綿密な対話を通じて、彼らの強みや事業承継を通じて実現したいビジョンを深く理解した上で、適切な企業を見極め、共に承継活動を進めます。これにより、初回面談から現経営者とのビジョンの共有が進み、承継後の未来を共に描く関係になります。そのため、経済的な条件のみではなく、情熱やビジョンに基づくサーチファンドの魅力を感じていただき、「お金ではない」と現経営者から応援の想いを持っていただけることことが弊社の大きな強みです。

 サーチャーにとって最も重要なことは、どのような企業で経営者として挑戦し何を成し遂げたいのかというビジョンを強く持つことだと考えており、サーチャーと多くの対話を重ねながら明確にしていきます。例えば、今般、株式会社パインバレーを承継した矢嶋正明氏は、日本を代表するセレクトショップである株式会社ビームスで執行役員を務め、ECやDX推進の経験を持つ人材です。今般、オーナー経営者として新たな挑戦をしたいとの想いから、私たちとともにハーレーダビッドソンのカスタムショップであるパインバレーを承継しました。

 矢嶋氏は、趣味のバイクの分野で、ECやDX、マーケティング等のこれまでの経験・強みを活かしながら、パインバレーをバイクカルチャーの発信拠点として人々を幸せにする「プレジャーブランド」にするというビジョンを掲げました。初回面談では、企業の現状や市場の分析に基づき、成長戦略を具体的に提案し、その結果、創業者の松谷昇一氏から「彼に任せたい」との信頼を得て、わずか4ヶ月という短期間で事業承継が実現しました。

 他の案件においても、サーチャーは自身のキャリアやビジョンを明確にし、人生をかけて挑戦する企業を見極めながら承継を実現しています。承継後においても、多様なバックグラウンドの私たちファンドメンバーが、それぞれの強みを活かしながらサーチャーを密にサポートしています。旧経営陣や従業員との関係構築をはじめ、ビジョンの実現と企業の成長に向けて全力で伴走しています。このような体制により、既に成立した企業では順調に承継が進んでおり、また業績についても好調に推移しており、今後もさらなる成長が期待されます。

 私たちは、サーチファンドを通じた良好な事業承継事例を引き続き創出し、事業承継の新たな選択肢を提供する社会インフラとして普及・発展させてまいりたいと考えております。私たちの取り組みにご興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。皆様の温かい応援と、貴重なご意見・ご指導を心よりお待ちしております。

 

著者プロフィール
National Search Fund株式会社 取締役 前田 健太
2017年より双日株式会社にて与信審査や事業投資先モニタリング等のリスク管理業務を担当し、
2019年にはフィリピンにて新設子会社の立ち上げ支援(ガバナンス体制整備)に携わる。
2022年に当社を創業。佐賀県武雄市出身。一橋大学商学部経営学科卒。
URL: https://ns-fund.jp/

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