BLOG

朝日税理士法人のブログを掲載します。

◆ 海外現地子会社の撤退にあたっての留意点 ◆

2025年6月9日 BLOG

日本の法人が、販路や生産拠点などを求めて海外に進出し、現地法人を設立するケースが多々あります。しかしながら、うまくいくことばかりではなく、撤退せざるを得なくなることも少なくありません。今回は、この海外現地子会社の撤退に際しての税務上の留意点をまとめてみます。

 

・適格現物出資

進出した国によっては、解散・清算にあたって、債務超過であることが認められず、日本の親会社からの借入金を資本金に組み入れて債務超過の解消を求められることがあります。原則として、完全支配関係にある親子間の現物出資は金銭等不交付要件等を満たすことで、適格現物出資となり、現物出資資産の時価評価が問題となることはありません。しかしながら、国内に所在する資産を海外の法人に現物出資をする際には、そもそも、適格現物出資の範囲から除外されていて、いかなる場合でも現物出資資産の時価評価が必要になるので、注意が必要です。

 

・外国子会社合算税制

上記の状況で、時価評価を回避して債務超過を脱するために、日本の親会社が海外子会社に対して債務免除を行うことも考えられます。債務免除を受けるような現地法人は、現地国における繰越欠損金がそれ相応にあり、現地における課税は生じないことも多いのかもしれません。この点、撤退を実務に移行したような現地子会社では、外国子会社合算税制の管理支配基準を満たさない可能性があり、外国子会社の所得を合算して日本の親会社の税額計算を求められることがあり得ます。その場合でも、現地国において繰越欠損金を利用して、課税が生じていないので、問題はないと判断されることもあるかもしれません。しかしながら、合算される外国子会社の所得は、日本の法人税法に則った所得計算を実施することを求められることもあります。日本の親会社が大法人である場合には、欠損金の利用方法など中小企業の規定の適用は認められないこととなりますので、注意が必要です。

 

・子会社株式消滅損と欠損金の引継ぎ

法人税法上、完全支配関係のある子会社株式の譲渡原価は譲渡対価と常に同額であることとなり、完全支配関係のある子会社を清算しても、子会社株式に関する損失の計上は認められなくなる代わりに、子会社の欠損金を引き継げるようになりました。ただし。これは、完全支配関係のある内国子会社に関しての定めです。外国子会社を清算した場合には、現地国における欠損金は引き継がれないものの、子会社株式の簿価は、消滅損として、法人税法上も適正な費用として取り扱われることになります。

社員税理士 半田 茂

カテゴリー

月別アーカイブ