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朝日税理士法人のブログを掲載します。

◆ 何故?コインランドリーは増えているのか ◆

2023年6月12日 BLOG

◆ 何故?コインランドリーは増えているのか ◆

 

Q:コインランドリーが増えているね。

 

A:共働き夫婦が増加するなど、様々なニーズの高まりを受けて増えたけど、今後は増えないかも?!

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【何故増えているのか】

この数年、増えてますよね・・●●が・・・

先日までコンビニだったところが、●●になったり・・

さて、●●とは何でしょうか?

答えは「コインランドリー」です。

ある調査では、この20年で2倍に増えたという報告があります。

何故、これほど増えたのか?その理由は

 

・共働き夫婦が増えたこと

→夜に洗濯をすると、洗濯機の音が近所迷惑になるのでコインランドリーを利用する世帯が増えた

・ゲリラ豪雨等の増加

→大雨等で洗濯が乾かない、豪雨で汚れ洗濯が増える、そのような理由でコインランドリーを利用するケースが増えた

 

・ダニ等のアレルギー対策ニーズの高まり

→ダニ等の対策のため布団やマットなどが洗濯できる大型洗濯機があるコインランドリーニーズが高まった

 

等々がありますが、これ以外にも理由があります。

それは、節税です。

 

【節税効果】

コインランドリー事業で使う業務用洗濯機や乾燥機は、税務上は減価償却資産というモノになります。

一般的に減価償却資産は、そこそこの取得価額になりますが、この金額は、直ぐには費用にならず、数年間に渡り減価償却費として少しずつ費用化されます。

業務用洗濯機や乾燥機は、税務上の耐用年数が13年とされているので、この期間をかけて少しずつ費用化されます。

しかし、この洗濯機や乾燥機は減価償却資産でありながら、ある税制を利用すると事業の用に供した初年度に取得価額の全てを費用として計上することができます。

そこそこの金額であるモノを初年度に全額費用にできるということは、税金の計算の基礎となる所得を減らすことができるため、節税が図れるということになります。

 

 

【何故全額費用にできるのか?】

それは、洗濯機や乾燥機は中小企業経営強化税制の即時償却資産というモノに該当しているため、この税制を利用すると初年度にその全額を減価償却費として計上(即時償却)が出来るのです。

コインランドリー事業における初期投資額は数千万規模になります。そのうち大半が洗濯機や乾燥機などの設備に充てられます。

その投資額の大半が即時償却として費用化されるので大きな節税ができるのです。

 

 

【コインランドリーを経営するのは誰?】

このような節税効果も相まって、前述したとおり、コインランドリーはこの数年劇的に増加しました。

さて、このコインランドリーを所有しているのは、どのような会社でしょうか?

「コインランドリーだから、クリーニング専門会社に決まっている」・・多くの皆さんはそのように思われるかもしれません。

しかし、その実情は・・・!

その大半がクリーニングとは全く関係の無い業種の会社です。

製造業であったり、小売業であったり、IT企業であったり、その業種は様々です。

そこには業種的に何ら関連性がありません。

ただ唯一共通しているのは、本業が儲かっていて、多額の法人税が課される懸念があり、故に節税を図りたいというニーズがあるということです。

 

 

【コインランドリー節税パッケージ】

このような共通ニーズにある会社に「コインランドリー節税パッケージ」とか「コインランドリー投資で安定収入+節税が出来る」と言った内容のDMがある業者より届きます。

そのDMには

・10〜20年の長期安定投資

・8〜12%の高利回り

・高い節税効果「投資金額の概ね8割を一気に費用化できます」

・場合によっては補助金を受けることが出来る

・無人経営で人件費不要

 

などの魅力的な言葉が並びます。

そして、極めつけの文句として

「コインランドリー経営は手間いらず!すべて当社にお任せください!」

というモノで締めくくります。

これを読んだ(DMを受け取った)社長は

「4000万円投資すると、3000万円以上費用にできるのか!」

「しかも、面倒な手配や経営は全て専門業者にお任せできる」

「当社は本業で利益が出過ぎて法人税が馬鹿にならんと思っていたところだ」

「よし!これを使って節税しよう」

という気持ちになり、その結果、クリーニング業と全く関係の無い会社が続々とコインランドリー事業という名の節税投資を行うようになるのです。

 

 

【課税当局の悩み】

「これも、クリーニングに関係の無い会社か」

「あっ、この会社は今年度3店舗もコインランドリーを開業しているが、まったくの異業種だ」

税務当局の偉い人(上司)はうんざり顔です。

「上席、どうしましたか?浮かない顔をして」

部下が声を掛けました。

「せっかく、中小企業経営強化を支援しようと思って作った制度が、節税スキームに使われている。何とかならんかね」と上司が言うと、部下は

「お任せ下さい。既に手を打っております」

といって、上司に令和5年度の税制大綱への要望案を見せました。

「なるほど!これはイイ!」

上司はポンと手を叩き「早速、要望案を上げてくれ」

と部下に指示をしました。

 

 

【いたちごっこの終焉】

このような経緯があったか否かは、定かではありませんが、今回の税制改正大綱にこの要望案と同様の改正事項が入りました。

「中小企業投資促進税制について(中略)対象資産から、コインランドリー業(主要な事業であるものを除く。)の用に供する機械装置でその管理のおおむね全部を他の

者に委託するものを除外する」

コインランドリーを使った節税スキームは、クリーニングに全く関係の無い会社が、節税スキームと称したパッケージへの投資を行うだけで、その運営は全て専門業者に

丸投げするものでした。

それ故、簡単手軽に事業を行うことができ、簡単手軽に節税ができたのです。

しかし、今回の改正で「管理のおおむね全部を他に委託する」=丸投げがNGとなったことで、簡単手軽に事業を行い、簡単手軽に節税をすることが出来なくなりました。

節税スキームを考える者が居て、そのスキームが流行る。これを「よし」としない課税当局が、税制改正をしてこれを潰す。

これまで何度も繰り返して行われてきた節税いたちごっこがこの改正でまた一つ潰された・・そんなカンジなんでしょうね。

 

 (文責:社員税理士  小竹 勝)

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