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朝日だより

過料

2023年06月12日 朝日司法書士法人

近頃、会社・法人の登記で「過料」を課される法人を目にする機会が増えてきましたので「過料」にについて確認したいと思います。


1.過料とは
過料が課される主な場面は以下の通りです。
100万円以下の過料の支払を課される場合があります(会社法976条以下)。
●登記の申請を怠った

●登記の前提となる役員の選任手続を怠った

●官報等への公告や株主名簿の編纂など法令上の義務を果たさなかったとき等過料が生じ得る場面は法律上は多岐にわたり規定されていますが、主に以下のような場面で過料通知が届く例が多いようです。

●みなし解散に伴う過料
→株式会社が12年以上、一般社団法人・一般財団法人が5年以上、何の登記申請もせずにいると、解散したものとみなされ登記官の職権により解散の登記がされ、これを契機に役員変更登記を申請していなかったか、任期が満了する役員の後任者を選任していなかったことが法務局・裁判所に明らかとなり、過料が課されるケースです。
みなし解散がされ、当事者としては会社を続けたいと考え「継続」の登記をしたとしても、それ以前の役員変更登記の懈怠についての過料制裁は免れられません。

●役員変更登記の遅滞
→みなし解散に至らずとも、登記を申請すべき時から2週間を超過すると、過料が課されることがあります。


2.「過料」と「罰金」の違い
「過料」と「罰金」はどちらも裁判所の決定(判決)により国家に金銭の支払をしなければならない点で類似していますが、異なる点もあります。
まず、制度の性質がことなります。
「過料」は、行政罰のうちの秩序罰の一種に位置づけられます。これに対し「罰金」は刑事訴訟法の手続による刑罰の一種です。
よって、「過料」は刑事罰ではないため、検察官に起訴されたり、刑事裁判にかけられたり、いわゆる前科がつくことも、ありません。
「過料」を支払わなかったとしても支払に替えるための労役場留置の処分を受けることもありません。
しかし、過料の支払義務者が個人財産について強制執行を受ける可能性はあります。
これに対し、「罰金」は刑事罰であるため、検察官による起訴を経て刑事裁判が行われ、有罪判決が確定した場合に支払義務が生じ、労役場留置の可能性もあります。
逃亡又は罪証隠滅のおそれがあるときは起訴に先立つ逮捕・拘留といった身体拘束を受ける場合も想定されます。


3.過料の支払い義務者、不服申立ての可否
(1)支払い義務者
「過料」の負担は、会社が負うのではなく、代表取締役など、登記申請や株主総会の招集など会社のために何らかの行為(事務)を適式に行うことを法律上義務付けられている人が個人として課されます。

(2)不服申立て
過料の決定に対しては、「異議申立」「即時抗告」という不服申立ての制度があります(非訟事件手続法122条2項、120条3項)。
しかし、裁判所が過料を決定する多くの事例では、法律で定められた一定期間内に登記申請がされなかった等、過料に該当する事実があることが客観的に明らかである場合が多く、不服申立てをしたところで裁判所の過料決定が覆る可能性は、ほとんど無いと言われています。


4.まとめ
役員変更登記の要否判断のほか、最新の定款や株主名簿の備置きなどの会社の義務も含め、先送りすると過料に処される可能性が出てくる事務があるかどうか日頃からチェックし、過料に処せられることがないようにするとよいでしょう。
朝日司法書士法人では日頃からこのようなご相談も承っておりますのでお気軽にご相談ください。

                             
(朝日司法書士法人 社員 高橋真人)

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