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朝日だより

事業承継税制の特例について(朝日税理士法人だよりVol.220)

2023年07月01日 朝日税理士法人

【事業承継税制の概要】

法人版事業承継税制は、後継者である受贈者・相続人等が円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において、その非上場株式等にかかる贈与税・相続税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度をいいます。

この制度には、恒久的な措置である「一般措置」と、時限的の措置で、納税者に有利な「特例措置」の2つがあります。

 

【特例措置創設の背景】

中小企業経営者の高齢化の急速な進展のなか、世代交代がなかなか進まない状況を踏まえ、事業承継税制について10年間の特例措置として、事業承継税制を拡充することを念頭に、特例制度が平成30年度税制改正において創設されました。

 

【特例措置の主な内容】

①会社の議決権の3分の2までという制限の撤廃

一般措置は発行済株式の3分の2までが納税猶予の対象ですが、特例措置は、会社の株式すべてを対象とすることが可能です。

 

②納税猶予の割合が80%から100%へ

一般措置は、猶予される相続税は80%で残りの20%についての納税が必要ですが、特例措置は、株式についての相続税の100%が納税猶予の対象なので相続税の納付なしに株式を承継することが可能です。

 

③先代経営者以外の株主からの贈与も対象に

一般措置は先代経営者本人が保有している株式のみが対象ですが、特例承継期間中の贈与税の申告に限っては他の株主からの贈与についても納税猶予が認められます。

 

④1人のみだった後継者が最大3人までに

一般措置は、後継者1人のみが対象でしたが、特例措置は、議決権の10%以上を持ち、かつ、議決権の順位が一族内で2位、3位であることを要件に、後継者は2人や3人でも可能です。

 

⑤雇用確保要件の弾力化

制度の適用を受けてから、5年間、平均で80%の雇用を確保しなければなりません。

一般措置では80%が維持できなければ納税猶予が取り消されてしまいますが、特例措置では、80%を下回った場合でも、実績報告書を都道府県知事へ提出することにより納税猶予を継続できるようになりました。なお、その場合は認定経営革新等支援機関による指導・助言を受けることが必要となります。

 

⑥業績悪化により会社を処分することとなった場合に、猶予されていた相続税を一定の要件で減免

一般措置では会社更生、民事再生など事実上の倒産の場合は猶予されていた相続税の減免や免除される制度はありましたが、特例措置では、一定の要件のもと、猶予されていた納税額が再計算され、元の額との差額が減免されます。これにより後継者のリスクが大幅に軽減されます。

 

⑦相続時精算課税制度の適用

特例措置では、後継者が推定相続人以外の時でも、先代経営者が60歳以上の時には相続時精算課税制度が適用できます。

 

 

【必要な手続きと適用期限】

事業承継税制の特例措置をうけるには6年以内の「特例承継計画書」の提出が必要となります。

この「特例承継計画」を策定し、都道府県知事へ提出し、確認を受ける期限が[令和6年3月31日まで]となっております。

また、適用期限は令和9年12月31日までの対象株式等の贈与又は相続が対象となります。

さらに、特例措置を適用した贈与税、相続税については申告期限後5年間について年1回都道府県知事へ「年次報告書」を、税務署へ「継続届出書」を提出する必要があります。

その後は3年に1回税務署へ「継続届出書」を提出しなければなりません。

 

【まとめ】

事業承継税制の特例は手続き、内容が複雑な部分もありますので、この機会にこの制度についてご確認いただければと思います。

 

(文責:関内本店 三浦恵理)

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