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朝日だより

アパートローンの金利について。変動?固定?(朝日税理士法人だより資産税版Vol.157)

2023年12月01日 朝日税理士法人だより 資産税版

年の瀬を迎え、今年も残り僅かとなりました。今回のテーマは、銀行の金利についてです。

 

【貸出金利のメカニズム】

洋服の小売りを例に考えてみます。洋服店は、商品を仕入れ、利益を乗せて販売しています。これは銀行の融資も同じで、顧客からの預金、あるいはインターバンク(銀行間取引市場)で調達した資金に、一定の利ザヤを乗せて、貸出しを行います。銀行では、原価をベースレート、利益をスプレッドと呼びます。

 

【一般証書貸付とローンの違い】

銀行の長期貸出形態は、大きく一般証書貸付(以下「一般証貸」)とローンに分けられます。簡単に言うと、一般証貸はオーダーメイド、ローンは既製服です。法人向け融資は1件あたりの金額が大きく、貸出金利は個別に判断をする為オーダーメイド型の一般証貸が多く用いられます。一方、個人向け融資は1件あたりの金額が小さめで、個別に銀行の採算を判断していると時間ばかりかかってしまいます。そこで、ローンという規格商品を使っています。銀行の店舗やホームページに、「店頭金利」が掲載されるのは、ローンならではです。

 

【アパートローンの金利について】      

次に、不動産賃貸業でよく利用されるアパートローンについてご説明します。まず、アパートローンの基本型である変動金利は、以下2パターンがあります。

  1. 短期プライムレート連動型…銀行が優良企業に対し、期間1年以内の貸出しを行う最優遇金利です。日銀ホームページを見ると、1.475%で設定している銀行が多く、「変動」と言いつつ実に2009年1月から変動していません。
  2. 市場金利連動型…市場金利の代表例はTIBOR(東京銀行間取引金利)です。当然ながら短期プライムレートより低い金利です。その分変動する可能性は高くなります。

 

【変動金利と固定金利、どっちがお得?】

これは、皆さまの関心が高いテーマです。

一般的には、長期の固定金利ほど利率が高くなります。将来の金利については明言し難いですが、先に述べた短期プライムレートに連動するローンであれば過去15年間は変動しておらず、その間変動金利より高い固定金利を組んだケースでは、結果その分利息を多く支払ったことになります。但し、固定金利を組んでいれば、安心感は大きいと思います。固定金利は、金利上昇リスクに対する保険料のようなものとも言えます。

 

【不動産賃貸業で気を付けたいこと】

当然、金利は低い方が有難いですよね。でも、不動産賃貸業で気を付けたいこと、それは「不動産を、本当の不動産にしないこと」です。勿論、土地は動かせません。そこで大事なのは土地以外の諸条件に流動性、可変性を持たせることです。

アパートローンの固定金利期間中は、繰上返済に「手数料」ではなく「違約金」がかかるのが一般的です。繰上返済時の金利情勢によっては、違約金が何百万円もかかることが想定されます。

不動産賃貸業において、物件単体ごとに収支バランスを合わせておくことが長期安定経営には不可欠です。それが図れていない物件については、一部繰上返済、売却、あるいは借換えなど様々な対策を検討する必要があります。その意味で、「違約金」の内容を十分把握して、金利を選択することをお勧めします。固定と変動を組み合わせたミックスプランを選択するのも良いかも知れません。ちなみに、この流動性、可変性の考え方は保証人や担保設定についても当てはまりますので、ローン利用の際にご参考になさって下さい。

 

【終わりに】

今年も皆さまには大変お世話になりました。

また、健やかな新年を迎えられますよう、心よりお祈り致しております。

(文責:奥村尚弘)

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