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朝日だより

“今年の贈与”はお済みですか?(朝日税理士法人だより資産税版Vol.156)

2023年11月01日 朝日税理士法人だより 資産税版

「あっ」という間に、今年も残すところ2か月を切りました。

今年の贈与手続きは、もうお済みですか?

 

贈与税の課税方法は2種類

贈与税には、“暦年課税”と“相続時精算課税”の2つの制度があります。

・暦年課税は、毎年110万円の基礎控除を適用して贈与税を計算する制度です。基礎控除を超えた金額に対しては、累進課税(10%~55%)で贈与税が計算されます。

・相続時精算課税は、贈与者が60歳以上で、受贈者が18歳以上で贈与者の直系卑属である場合に選択できる制度です。この制度を選択すると、2,500万円の特別控除を適用して贈与税を計算することができます。特別控除額を超えた金額に対しては一律20%の税率で贈与税が計算されます。ただし、相続時には贈与済みの財産を相続財産に持ち戻して相続税が計算(相続時に精算)されますので注意が必要です。

 

年内に贈与を検討すべき理由

令和5年度税制改正などにより、令和6年1月1日以降の贈与から制度が変わるものがあります。

【改正①:生前贈与の加算期間延長3年から7年】

相続税計算時に持ち戻しされる生前贈与加算の対象期間が3年から7年に延長されます。(※延長する4年間の贈与のうち、総額100万円までは相続財産に加算されません。)

適用されるのは令和6年以降の贈与からのため、令和9年1月1日以降に発生する相続から持ち戻し期間が延長されます。

 

【改正②:相続時精算課税に110万円基礎控除】

相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除が新設されます。相続時精算課税制度を選択した場合、令和6年以後の贈与について年110万円までなら贈与税がかからないだけでなく、年110万円までは相続税計算時の持ち戻しも不要となります。(※基礎控除以下は贈与税申告不要)

 

【改正③:マンションの評価方法変更】

相続税評価額が低いタワーマンションを相続直前に購入して相続税を回避する事例が相次いだことから、令和6年1月からマンション評価の計算方法が改正される予定です。改正後は、マンションの相続税評価額が市場価格の約4割(現行)から約6割(改正後)に引き上げられます。

この改正により、相続税の公平性が向上し、相続税評価額を低く抑えるためのタワマン購入による相続税対策が難しくなると考えられます。

 

具体的な利用例

暦年贈与のメリットは、毎年110万円の基礎控除があるため、長期にわたって(相続税の適用税率よりも)低い贈与税率で財産を移転できる点です。贈与者が既にご高齢であれば、基礎控除にこだわらず、ある程度まとまった金額を年内に贈与しておいた方が良いかもしれません。

相続時精算課税のメリットは、相続税の計算時に加算する贈与財産価額を、贈与時の価額に固定できる点です。将来値上がりの期待できる財産を早めに贈与すれば、相続税を抑える効果が期待できます。

マンションの評価方法変更も令和6年1月以降の相続・贈与について適用される予定です。裏を返せば年内の贈与に関しては現行(市場価格の約4割)の評価方法が適用されます。たとえばマンション住まいのご夫婦であれば、この機会に“おしどり贈与※”の実行も一考の余地があります。

(※婚姻20年以上の夫婦間における居住用不動産贈与に対する2000万円控除の特例)

 

おわりに

生前贈与の活用は、相続税対策の定石です。

来年には贈与税の仕組みが大きく変わりますので、是非お早めに年内の贈与についてご検討ください。

ご不明点がある場合や、贈与実行の際には弊社までお問い合わせください。

(文責:中村和仁)

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