【幸せだったAさんだったのに】
Aさんは結婚し10年目を迎えました。「節目の記念」としてちょっと奮発、高級ホテルにて食事をし、「これからもよろしく」というメッセージとともに以前から欲しかったブランド製のバックをプレゼントしてもらいました。
「子供には恵まれなかったけど、この人とならこれからも幸せに暮らしていける」Aさんはメッセージカードを読みながらそう思いました。
そんな幸せを感じていたある日、Aさんの携帯に連絡が・・・夫が事故に巻き込まれ意識不明の重体とのこと。Aさんが病院に駆けつけるも、とき既に遅し、夫は帰らぬ人となってしまいました。
【私、頑張る】
あの日からAさんの時は止まったまま、毎日悲しみに暮れていました。
「でも、これじゃイケナイ」笑顔いっぱいにあふれる夫の写真を見てAさんは思いました。
「あの人の思い出と、残してくれた財産がある。これを大事にしてあの人の分も長生きしなくては!」Aさんは涙を拭き、夫の写真の前で誓いました。
【突然の来客その1】
そのとき、自宅のチャイムが鳴りました。
ドアを開けてみると亡き夫の兄が立っていました。
「その節(葬儀の際)は色々ありがとうございました」お焼香をしている義兄にAさんが声を掛けると義兄は振り向き、思いもよらないことを言いました。
「弟の財産の1/4はワシが頂くからな」
この財産は、結婚して夫婦2人で蓄えたモノ、それをどうして義兄に渡さなければならないの・・
混乱するAさんに義兄は「あんたら夫婦には子が居ない。俺たち兄弟の両親は既に他界している。そうした場合、兄弟は1/4の法定相続分がある」との説明を受けました。
【突然の来客その2】
「法定でそのような割合があるなら仕方無い」そう思い、財産の1/4を義兄に渡そうとしていたそ
のとき、またチャイムがなりました。
【衝撃の事実】
ドアをあけると、小さな男の子が立っていました。
その後ろには母親のような女の姿がありました。
その女は「公正証書」と書いてある書類を見せ、驚くべきことを言いました。
「この子は、あの人の子。ほらここに『子を認知する』って書いてあるでしょ」
「嘘!あの人に隠し子が居たなんて」あまりにも衝撃的なことで声も出ないAさんに女は、更に驚くことを言いました。
「この子はあの人の唯一の子よ、だからあの人の財産の半分はこの子のモノよ」
そう言って、義兄が今まさに受け取ろうとしていた財産×2倍の財産を鷲掴みにして、男の子の手を引っ張り、さっさと戻っていきました。
【ラブレターの勧め】
Aさんは、最愛の夫を亡くし、そしてその夫に裏切られ、その上、財産の半分も持っていかれ、大変な思いをしてしまいました。
その夫はきっと、天国で「妻に申し訳ない」という気持ちで一杯だと思います。
そんな亡き夫は、妻が悲しい思いをしないために生前何をすべきたったでしょうか?
『浮気をせず隠し子を作らない』『事故に遭わない』など反省すべきことは沢山ありますが、一番大事なのは『愛する妻に全ての財産を相続する』と記した遺言という名のラブレターを残すことでした。
これがあれば、仮に隠し子が居ない場合、義兄に1/4の財産を渡す必要はありません。
義兄が主張しても、義兄には遺留分という権利が無いので心配はいりません。
また、隠し子が公正証書で認知されていたとしても、遺言があれば、原則財産は妻のモノです。
仮に、遺留分を主張されても持っていかれる財産を1/4まで抑えることが出来ます。
これをお読みの男性の皆さん!身に覚えがある無しに拘わらず、愛する奥様へのラブレター(遺言)は大事ですよ。
(文責 社員税理士 小竹 勝)