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朝日だより

マンション高騰の余波(朝日税理士法人だより資産税版Vol.153)

2023年08月01日 朝日税理士法人だより 資産税版

1.令和5年路線価発表

 令和5年分の路線価が、2023年7月3日に国税庁より発表されました。今年は全国の「標準宅地」の路線価平均が約1.5%、東京都の平均は約3.2%上昇した結果となりました。

 マンションの相続税評価額は、土地と建物の評価額の合計額となります。

 土地の評価額は、この「路線価」が基準となりますが、建物の評価額は、「固定資産税評価額」で評価します。「固定資産税評価額」は、毎年4月頃に地方公共団体より不動産所有者宛てに送付される「納税通知書」に記載されています。

 不動産価格指数(国土交通省)によれば、2008年(平成20年)のリーマンショック後に不動産価格は大きく下落しましたが、2013年(平成25年)から再び上昇に転じました。その中でもマンション価格は右肩上がりで上昇し続けています。

 特に東京23区の新築分譲マンションの価格が高騰し続けており、その流れは中古マンションにも波及し、港区など一部の人気エリアでは、新築時の2倍以上に値上がりしている物件もあるそうです。

 

2.相続税評価額と市場価格の乖離が急拡大

 国税庁によると、23区内の高層マンション(43階建:67.17㎡23階 築9年)市場価格11,900万円の物件が、相続税評価額3,720万円(乖離率3.20倍:相続税評価額が市場価格の約1/3にまで低下)の事例があり、地方(福岡県)のマンション(9階建:78.20㎡9階 築22年)でも市場価格3,500万円の物件が相続税評価額1,483万円(乖離率2.36倍)の事例があるそうです。

 

3.相続税の「大原則」が揺らぐ

 相続税法では、相続又は贈与により取得した財産の価額は、「当該財産の取得時における時価による」こととされています。

 現在のマンション市場価格と相続税評価額とが大きく乖離している状況は、「課税の公平」の見地からも、もはや放置できない水準まで達しています。

 

4.マンション評価方法の見直し、改正へ

 昨年末の令和5年度与党税制改正大綱に「相続税法におけるマンションの評価方法については、相続税法の時価主義の下、市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する」旨が記載されました。公表された「相続税評価の見直し案(要旨)」の主要な項目を要約すると以下のとおりになります。

・相続税評価額が市場価格と乖離する要因となっている「築年数」「総階数」「所在階数」「敷地持分」、この4項目を指数化して、評価対象マンションの市場価格(理論値)を算出する。

・相続税評価額がこの市場価格の60%に達しない場合は、60%に達するまで評価額を補正する。

・相続税評価額がこの市場価格の60%以上であれば、補正しない。

なお、この数値(60%)は、一戸建ての相続税評価(市場価格の約6割)を踏まえたものです。

・令和6年1月1日以後の相続等又は贈与により取得した財産に適用する。

・適用後も固定資産税評価替えの時期に併せて、当該時期の取引事例等に基づき見直しする。

 前述の事例の高層マンションの場合は、改正後の相続税評価額が7,142万円(増加額3,422万円)となり、この改正が大きな影響を及ぼすことは間違いありません。

[計算式3,720万円×3.2(乖離率)×0.6]

 

5.終わりに

 以上のように、相続税を取り巻く環境は、日々刻々と変化しています。

相続税評価等について分からないことや不安などがありましたら、お早めに相続税に詳しい専門家のいる朝日税理士法人にご相談ください。

(文責:小針 彰)

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