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朝日だより

生前贈与についての税制が変わります(朝日税理士法人だより資産税版Vol.150)

2023年05月01日 朝日税理士法人だより 資産税版

1.令和5年度税制改正 

令和5年度税制改正では、相続時精算課税制度の改正と、暦年贈与に係る相続税の課税価格への加算期間の見直しが行われました。

 贈与税の課税方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、一定の要件に該当する場合には「相続時精算課税」を選択することができます。

「暦年課税」は毎年贈与を受けた財産の額から110万円を差し引いた残りの額に対して税金がかかります。税率は累進課税制度を採用しています。

 「相続時精算課税」は、原則として60歳以上の父母又は祖父母(直系尊属)などから、18歳以上(※令和4年3月31日以前に贈与により財産を取得する者については20歳以上)の子又は孫などに対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。

 税額計算の方法は、贈与財産の合計額から複数年にわたり利用できる特別控除額(限度額:2,500万円。前年以前にすでに控除している場合は残額が限度額となります。)を控除した後の金額に一律20%の税率で贈与税がかかります。

 ただし、次のような注意点があります。

 

2.相続時精算課税制度の注意点

①特別控除額2,500万円まではそのときの贈与税は課税されませんが、相続時精算課税制度を使って贈与した財産は、贈与時の評価額で相続財産に持ち戻され、相続税が課税されます。仮に10年前に贈与した財産の贈与時評価額が5,000万円で、それが相続時評価額が2,500万円になっていたとしても、贈与時評価額の5,000万円で相続財産に持ち戻され、相続税が再計算されてしまいます。

 このように、将来価値が下がる可能性があるものは相続時精算課税制度には不向きと言えるでしょう。

 逆に将来値上がりが期待できるような財産につ

いては、贈与時の価格で評価額が固定できるため、

 

この制度に適していると言えます。

②相続時精算課税制度は一度選択すると撤回が出来ません。

 一度選択すると暦年課税を選択することが出来なくなります。選択するときには十分な検討が必要です。

③2,500万円の控除を受けるためには、期限内申告(贈与年の翌年3月15日まで)が要件になっています。仮に期限後申告になってしまった場合には、この特別控除額が使えなくなりますので注意が必要です。

 

3.令和5年税制改正の内容

 令和6年1月1日以後に受けた贈与について、下記の改正が行われました。

・暦年課税の改正

 これまでは、相続開始前3年以内の贈与については贈与額を相続財産に加算して相続税が課税されていましたが、今回の改正により、この加算期間が7年間に延長されます。加算期間は令和9年1月以降段階的に延長され、令和13年1月以降の相続から7年間になります。 

・相続時精算課税の改正

今回の改正で2,500万円の控除額のほかに毎年110万円の基礎控除が創設されました。

 今までは、2,500万円を超えると、その超えた部分に一律20%の贈与税が課されましたが、110万円までであれば、贈与税もかからず、申告も不要になります。

また、暦年課税であれば相続開始前7年以内の贈与については、たとえ基礎控除以下の贈与であっても相続財産に加算されますが、相続時精算課税においては、この110万円以下の部分に関しては相続財産への加算の対象外となります。

 

4.おわりに

生前贈与に関しては、それぞれの方に合った方法を選択する必要があります。

 生前贈与や相続対策について、ご不明な点等ございましたら、朝日ビジネスコンサルティンググループへご相談ください。

(文責:山﨑祐未)

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