国税庁が先般公表した令和7年度税制改正に係る改正法人税基本通達等において、フリーレント期間が定められた契約に係る借手の法人税処理に関する取扱いが新設されました。フリーレントとは、事業者が店舗やオフィスを借りる際、契約開始から3カ月は家賃が無料など、入居後の一定期間の家賃が無料になる契約形態のことを言います。
フリーレント期間の家賃に関する借手の会計処理には、以下の2通りの方法が考えられます。
①仕訳なし方式
フリーレント期間は「仕訳なし」、実際支払時に支払額で会計処理を行う方法。
非上場の会社はこの方法で処理されていると思います。
②期間按分方式
フリーレント期間を含めた契約期間全体の賃料総額を算出し、その総額を契約期間で均等に按分して、各月で費用計上する方法。
上場企業では、この方法が一般的です。
②の期間按分方式の場合、フリーレント期間にも家賃を未払計上することとなりますが、②の方法による損金算入を否認する裁決が下された事例(平成30年6月15日裁決)があり、フリーレント期間に計上した未払家賃については、一般的には税務上損金算入できないものとして扱われてきた経緯があります。
しかし、今回新設された基本通達によれば、フリーレント期間の家賃について②の方法で経理処理した場合、費用処理した金額の損金算入が原則認められることとなります。この取扱いは上場企業に適用される新リース会計基準を踏まえて新設されたものですが、当該基準を適用しない中小企業等であっても②の方法による未払家賃の損金算入が認められます。もちろん①の方法を今後も引き続き採用することも可能ですが、②の方法によった場合の方が損金化が早まり税金面でも有利となりますので検討の余地はあろうかと思います。
ただし、Ⓐフリーレントに相当する金額が契約に占める割合が大きすぎる場合やⒷ1事業年度のうちフリーレント期間が長すぎる場合には、課税上弊害があるものとして②の方法による損金算入が認められないケースもありますのでご留意ください。なお、こちらの取扱いは、令和7年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税より適用されます。
社員税理士 泉 俊史