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朝日税理士法人のブログを掲載します。

◆ 税務調査の動向について ◆

2024年1月22日 BLOG

毎年11月末に国税庁から発表されている各税目の「調査事績の概要」について、例年どおり最新情報が公表されました。公表内容から、法人の税務調査の動向についてお伝えします。

 

「令和4事務年度 法人税等の調査事績の概要」

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2023/hojin_chosa/pdf/01.pdf

 

まず実地調査の件数ですが、前年対比152.3%増(約62千件)と前年と比べると大幅に増加しています。しかし、コロナの影響がなかった平成30事務年度の調査件数が99千件であったこととからすれば、まだ通常時の3分の2程度の件数ということになります。

 

接触率(実地調査件数と簡易な接触の件数を分子として、年間で何%の法人に接触しているかの割合)については3.9%と記載されています。「簡易な接触」とは、簡単に言えば書面や電話による連絡のことで令和4事務年度における簡易な接触件数は66千件であったということです。そうすると実地調査に限定した接触率は1.9%程度ということになり、全ての法人に対して実地調査を行おうとすると50年以上を要することになります。この資料によれば、「大口・悪質な不正計算等が想定される法人など、調査必要度の高い法人について実地調査を実施し、申告内容に誤り等が想定される法人に対して、簡易な接触により、自発的な申告内容の見直し要請などを実施している」とのことです。

 

また、法人税における税務調査で誤りを指摘された件数は47千件ということですので、調査を受けた62千件のうち4分の3程度の法人が何らかの誤り(申告漏れ)を指摘されて、修正申告・追加納税を行っていることになります。

 

税務調査によって申告漏れを指摘された所得金額は総額で7,801億円、追徴税額は1,868億円ということなので、1件当たりの増差所得は16,597千円(=7,801億円÷47千件)、追徴税額は3,974千円(=1,868億円÷47千件)となります。結構な金額ですが、一部の大企業が金額を引き上げているという背景もあるものと推測しています。追徴税額に関しましては、コロナ前の平成30事務年度の調査では1,943億円ですので、調査件数が減少しているほどには減っていないことが分かります。

 

以上が令和4事務年度における税務調査の動向になりますが、最近2カ月弱の間に私が担当させていただいている顧問先だけで7件も税務調査の連絡がありました。もしかしたら、令和5事務年度の調査件数はコロナ前の水準まで戻るのかもしれません。

社員税理士 泉 俊史

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