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朝日税理士法人のブログを掲載します。

◆ 翌年に訪れる思わぬ税金の正体とは ◆

2023年5月10日 BLOG

◆ 翌年に訪れる思わぬ税金の正体とは ◆

Q:前年の所得に課される税金があるって聞いたのだけど

A:それは住民税だよ。前年所得をベースに翌年6月以降に課されるよ

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【充実したそれぞれの二人】
今年のゴールデンウイーク、皆さん如何お過ごしだったでしょうか。
長期の休みを利用して遠方に旅行へ行かれた方、観光地は混むので、あえてご自宅でゆっくり過ごされた方等々、人それぞれ様々な過ごし方をなされたと思います。

今回は、このゴールデンウイークをとても充実して過ごされた方をご紹介します。
1人目はAさんです。
社会人になって2度目のゴールデンウィークは、職場の仲間とバーベキューなどをして過ごしました。
『ジュージュー』とお肉が焼ける音・・・それを聞きながらおいしそうにビールを飲むAさんは、同僚達から「お前凄いよな」と声を掛けられ、ちょっぴりご満悦。
それもそのはず、入社直後からメキメキとチカラを発揮、これが評価され入社2年目でありながら、誰もが憧れる企画部に大抜擢。
この4月より同期一番の昇給を果しました。
「よーし、連休が明けたら、バリバリ頑張るぞ」Aさんは、熱々に焼けたお肉を頬張り、期待に胸を膨らませ、充実したゴールデンウイークを過ごすことが出来ました。

もう1名はBさんです。
Bさんにとって、今年は長年の夢が叶った年でした。
その夢とは、世界一周旅行。
Bさんは、昨年一年間、ほぼ毎日アルバイトを行い頑張って旅行代金を貯めました。
こうして手にしたお金の全てを投じて、今年初旬から念願の旅行に出かけました。
そしてゴールデンウイークのころには最も楽しみにしていた国々を巡り、この旅行のクライマックスを向かえ、5月下旬に日本に帰国する予定です。
この様に、充実した時間を過ごす二人ですが、この数週間後にとんでもない不幸が訪れることを二人は知る由もありませんでした。

 

【6月ある日の出来事】
連休から1ヶ月が経過した6月のある日
Aさん「えーっどうして!」
Bさん「なんだ!これは!」
6月に入ったある日、AさんとBさんは、目を疑うような事実に直面しました。

「昇給したハズなのに給与が下がってる!」とAさん
「なんだ、この通知書は!」とBさん
いったい二人に何が起こったのでしょう。



【Aさんのがっかり】
「ちょっと俺の給与明細みてくれよ。」
6月の給与支給日に明細を受け取ったAさんは、同僚のCさんに給与明細を見せました。
「先月(4月)に昇給したばかりなのに、今月(6月)に支給を受ける5月分の給与が下がっている。」
Aさんは、悲しそうな顔をしています。
「連休のバーベキューの際、企画部に抜擢され、給与が上がったと言っていたじゃないか。」
そう言いながらCさんは、その給与明細を確認しました。
「ホントだ。確かに下がっている。」
Cさんは先月分の明細と見比べ言いました。
「これ、総務に確認してみた方がいいぞ」
がっくり肩を落とすAさんにCさんは言いました。

それからしばらくして、Cさんの携帯に「住民税の『せい』らしい」・・・Aさんからメッセージがありました。
心配したCさんが話を聞いてみると、Aさんから次のような説明がありました。
・給与は下がっていない。(きちんと昇給している。)
・下がった原因は、今月から住民税が天引きされたため。
・Aさんにとって、住民税は所得税の税率よりも高く、その率は10%であるとのこと。

それを聞いたCさんは、自身の明細を確認しました。
「俺も今月から天引きされて手取り額が下がってる。」
Cさんもガッカリしました。

「でも、どうして急に住民税の天引きがされるんだ。」
Cさんは不思議に思いました。
この疑問についてAさんは「総務の人に教えてもらった話」として次のように答えました。
「住民税って前年の所得について、課税されるみたいなんだよ。だから、入社1目は前年の所得が無いから課税されないけど、二年目は前年(一年目)の所得があるから課税されるみたいなんだよ。」

そうなんです。住民税は、前年度の所得に対し賦課課税される税金なのです。よって前年度所得が初めて生ずる新卒二年目に課税されるので、Aさんのようにビックリする方も多々あるかと思います。
しかも、その税率は、所得税の最低税率5%の倍、10%であることから、その税額も(所得税に比して)大きくなるケースが多々あります。

 

【Bさんの悲劇】
旅行から戻ると、Bさんの元に、世界各地で知り合った方々から沢山のエアメールが届いていました。
その一つ一つに目を通し旅行の余韻に浸っていると、その中に地元市町村から届いた封書を見つけました。
「なんだろう。」
その封書を開けてみると「住民税決定通知書」と記載された用紙があり、決して安くはない金額(税額)が記載されていました。
「えっ!何で税金が課税されるんだ。」
突然目にした通知書を前にBさんは旅行の余韻に浸るどころか頭が真っ白になりました。
「これは何かの間違えだ・・だってバイト代の税金は、年末調整で精算しているのだから。」
そう思ったBさんは、通知書に記載された●●市の住民税課に電話をしてみました。

それから数分後、次のことを思い知らされたBさんがそこにありました。
『思い知らされたこと・・その1』
→年末調整で納税を終えた所得税の他に、住民税という税金があるということ。
『思い知らされたこと・・その2』
→住民税は、一年遅れで課税されるということ。
『思い知らされたこと・・その3』
→その税率は、Bさんの所得税率の倍である10%であり、税額が所得税よりも多くなるケースが多々あること。

今回の旅行で全てのお金を使い果たしてしまったBさんは、再びバイトを始めました。
その目的は、前回のような夢の実現のためではなく、納税通知に記載された税金を納めるためです。
「税金って知らないと大変なことになる」
Bさんはしみじみ感じました。

 

【忘れないで住民税】
我が国には沢山の税目(税の種類)があります。
これら税金の大半は、課税の対象たるもの(=課税客体)に税率を乗じ算出された税額を納税することになります。
この納税について一般的には、課税客体の状況と納税のタイミングは、それほどズレません。
・例:固定資産税は、その年1月1日の不動産状況(=課税客体)に応じて、4月頃に納税
・例:法人税は、決算を受け計算した所得(=課税客体)に対し2ヶ月以内に納税
これに対し、住民税は、前年の所得=(課税客体)に対し、翌年6月から納税が開始
され、そのタイミングが固定資産税や、法人税など他の一般的な税目に比して大幅にズレます。

このようなことから、入社2年目のAさんのように、これまで天引きされていなかった税負担が急に生じて給与が下がったように感じたり、Bさんのようにお金を使い切ったあとに、納税通知を受け取る羽目になったりします。

忘れたころにやってくる、住民税を皆さん是非忘れずにして頂き、AさんもしくはBさんのような思いをしないようにして下さい。

(文責:社員税理士 小竹 勝)

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