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朝日税理士法人のブログを掲載します。

◆ 業界初、潜入リポート「課税明細書の謎に迫る」 ◆

2023年4月10日 BLOG

◆ 業界初、潜入リポート「課税明細書の謎に迫る」 ◆

Q:四月はフレッシュな気分なのに、それを台無しにする奴がいるよ

A:課税明細書のことだね。イヤな通知だけど、中身は確認しないとね。

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【フレッシュ期分が台無し】
四月、「新入学」「新学期」「新入社」「新年度」のシーズン。
桜の花が咲き、そしてそれが散っても、味気なかったアスファルトの道をピンク色に染め、なんだか新鮮で晴れやかな気持ちになれるとても良い季節です。
「俺、新入学でも新入社でもないけど、なんだかフレッシュな気持ちだから心機一転頑張っちゃおうかな」とすがすがしい気持ちになったのもつかの間・・・・
「お前・・また来たのかよ」・・・フレッシュな気分は一瞬に冷めてしまいました。

 

【台無しの張本人】
・封筒:「申し訳ございません。今年も来てしまいました。」
・男:「まーしょうがないな。そっちも『決まり』があって、こなくちゃイケナイんだろ。」
・封筒:「そうなんです。『決まり』で毎年この時期にこなくっちゃイケナイんです。」
・男:「でっ・・今回はいくらなんだ。急に上がったら許さないぞ。」
・封筒:「ご主人、心配しないでください。確かに、ご主人のブツはかなり値上がりしていますが、私どものルールで一気に上げないようになっているんです。」
・男:「そうか・・それなら払ってやろう。」
「それで、このまま、お前と会話を続けていると、読者の皆さんは何のことだか解らなくなるから、きちんと読者の皆さんに挨拶しろよ。」
・封筒:「あっ・・そうでした。」「それでは、自己紹介をします。」
「皆さん、初めまして・・あっ・・もしかすると既に、読者の皆さんのところにも届いているので初めてではない方もいらっしゃると思うのですが、一先ず自己紹介させて頂きます。私『固定資産税納税通知書兼課税明細書』と申します。」
「長い名称なので『課税明細書』って呼んで下さい。」
「毎年、四月のすがすがしいシーズンに、皆様のポストに届き、すがすがしい気持ちに水を差し申し訳ございません・・」

 

【そういえば、確認したことないな】
この水を差す「課税明細書」が届くと、、、、
「仕方ないな~ぁ・・払わない訳にいかないから、納税するか」
このように、渋々納税していると思いますが、この明細書の中身ってよくご覧になっていますか?
・読者A:「そーいえば、なんだか、いろいろごちゃごちゃ書いてあるけど、その内容は確認したことないな。」
・読者B:「顧問税理士は、確定申告については、毎年ちゃんと説明してくれるのに、以前、固定資産税のことを聞くと「それは、役所が勝手に計算する税金だから、税理士に聞かれても答えられない。」って言われたことあったな。」
「だから内容はよくわからないな。」
・読者C:「まー役所が計算しているんだから間違えとか無いんじゃない・・だから内容を確認しなくても大丈夫じゃないかな。」
このように、殆どの人は、結構な税額であるにも拘わらず、その内容をよく確認せず、納税しているようです。
でも、それでイイの?
・読者A:「イイ訳ないよ。」
・読者B:「そうだよ。納税者の権利として知りたいよ。」
・読者C:「ちょうど良い機会だ。ここで勉強しよう。」
という訳で、ここで課税明細書の内容を皆様にご案内します。
課税明細書には、土地と家屋に関する事項が記載されていますが、今回は土地にフォーカスしてご案内いたします。

 

【業界初、潜入リポート】
・リポーター
「さぁーて、皆さん!今回は四月の新鮮な気分を台無しにする『課税明細書』と書かれた封筒の中をリポートしてみたいと思います。」
「本日訪れましたのが、横浜市●●区●●町です。」
「閑静な住宅が建ち並んでおり、戸建ての他、アパートなども点在しています。」
・スタジオ
「なるほど、普段、私たちの身近にある住宅地ですね。」
「それでは、取材を続けて下さい。」
・リポーター
「はい、早速、あるご自宅のポストに投函されたばかりの、封筒の中に入ってみたいと思います。」
・スタジオ
「何か見えますか。」
・リポーター
「はい、目の前に課税明細書が現れました。封筒にピッタリ入るサイズです。」
「茶色っぽい枠(升目)に何やら記載されています。」
・スタジオ
「どんなことが書いてありますか。」
・リポーター
「こっ・・これは、凄い!!カメラさん、もっと近づいて下さい。」
(カメラ近づく)
「数字です!数字です!皆さん!ご覧いただけるでしょうか、沢山の数字がところ狭ましに羅列されています。」
「それと数字以外にいくつかの文字が見えます。」
・スタジオ
「沢山の数字、それと文字ですか。」
「封筒の中は狭いので注意してリポートを続けて下さい。」
・リポーター
「はい、わかりました。リポート結果は後ほどまとめてご案内させて頂きます。」
・・・・・そして数時間後、リポート結果が送られてきました。

 

【数字の羅列】
課税明細書を埋め尽くす数字は大きく分けて次の3種です。
「価格」「課税標準額」「税額」
このうち、「価格」と「課税標準額」について説明します。

 

【価格とは】
これは、固定資産税におけるその土地の評価額です。
この評価額は、時価の7割を目安に設定されているとのことです。
この価格が、以後に説明する課税標準額のベースになります。

 

【課税標準額とは】
固定資産税は、ある金額に税率(1.4%)を乗じて算出します。
課税標準額とはこの「ある金額」のことです。

この課税標準額は次の3種類に分けて記載されています。
一つは「前年度課税標準額」
それと「本則課税標準額」
そして最後に「課税標準額」

まず「前年度課税標準額」・・・
これは読んで字のごとく、前年度の課税標準額です。
前年度の固定資産税は、この数字に税率を乗じて算出されております。
(実際は、全ての課税標準額を合計した額(千円未満切り捨て)に税率を乗じて算出します。)

次に「本則課税標準額」・・・・
これは、先に説明した「価格=(固定資産税におけるその土地の評価額)」をもとに算出した金額です。
「本則」との冠が付いているとおり「本来なら固定資産税はこの課税標準額に税率を乗じて算定したいよー」と課税当局が思っているようなカンジの金額です。

最後に「課税標準額」・・・
これは、課税標準額の中の課税標準額ということになります。
固定資産税はこの金額に税率を乗じて算出されます。
本来であれば、この課税標準額は、二つ目に説明した本則課税標準と同じにしたいのですが、そうでない場合(一致しない場合)があります。

 

【何故一致しない】
先に説明したとおり、固定資産税は課税標準額に税率を乗じて算出されます。
そして、その税率を乗じる前の課税標準額は「価格」をベースに算出されます。

この「価格」は土地の時価をベースとして評価する額により算出されます。
その評価は3年毎に行いますが。時価であるため、その時代・時期の状況により上下します。

その状況による時価を反映して価格をもとに算定した課税標準額を「本則課税標準額」と言います。
よって、時価が上がると本則課税標準額も上がります。

先に説明したとおり「本則課税標準額」は「本来なら固定資産税はこの課税標準額に税率を乗じて算出したいよー」と課税当局が思っているようなカンジの金額です。

よって、土地の時価が上がっている場合、課税当局の思いに従い「本則課税標準額」に基づき、固定資産税を計算してしまうと、いきなり税額がアップしてしまい、納税者に大きな負担を与えてしまいます。

そこで、土地の値上がりによる税額負担をいきなり納税者が受けないように、固定資産税では、その負担を緩和する措置が取られています。

その緩和する措置を経て算出し額が上記の三つ目に説明した「課税標準額」になります。

「本則課税標準額」は、土地の時価の上昇などがあった場合、それをダイレクトに反映させ算出する。
一方、「課税標準額」は本来であれば本則課税標準額と一致させたいところであるが、時価の上昇があった場合、その上昇負担を緩和させて算出する。
よって、両者は一致しない場合があるのです。

 

【文字が「キー」になる】
先に「価格が課税標準額のベースになる」旨の説明をしました。
「ベースになる」の意味は、価格に一定の調整をするということです。
今度は、この「調整」について説明します。
先ほどのリポート時に、課税明細書には「数字の他、文字の記載があった」とありましたが、この文字が調整のキーになっています。

 

【( )書きが重要】
その記載されている文字とは「地目」です。
今回はその代表的な地目である「宅地」について説明します。
何故「宅地を取り上げたか?」それは、上記の「一定の調整」に一番影響があるのが宅地であるからです。

地目のところに記載された「宅地」の部分をよーく見てみると( )書きで様々な文字が記載されています。
それは「住宅」「非住宅」「小規模」といった文字です。
これが、一定の調整に大きな影響を与えています。

 

【住宅とは】
固定資産税は、人が住む建物の敷地について優しい税金です。
それは、人が住んでいる敷地ということだけで1/3までディスカウントしてくれるのです。
(例)
・時価4300万円の土地がありました。
・固定資産税は時価のおおむね7割で評価するので、その価格は約3000万円になります。
・この土地が人の住む家の敷地であると、課税標準額は1/3である1000万円になり、この金額に税率が課され、固定資産税が算出されます。

 

【非住宅とは】
一方、この宅地が、店舗や事務所、工場など住宅以外の敷地やアスファルト駐車場の場合は、人が住む敷地でないので、大きなディスカウントはしてくれません。
そうは言っても、価格(=評価額)に対しまともに税率を乗じるようなことはありません。
上記の例(3000万円の価格)の場合、おおむねその7割である2100万円が課税標準額になります。

 

【小規模とは】
「小規模って・・もしかしたら小さい土地は固定資産税がとっても安くなる。」ってことかな・・そんなカンジがしそうな用語ですが、そういう意味ではありません。
先ほど人が住む建物の敷地については「1/3になる」と説明しましたが、これはその半分「1/6」まで軽減されるモノです。
先の例で言えば、課税標準は500万円まで下がるということになります。
(相当下がります!)

 

【1/6になるのはどんなケース】
さて、この大幅軽減である1/6になるのはどんなケースか下記に説明します。
それは、人が住む家屋1つに対し、その敷地の200㎡までの部分に限定するからになります。
例えば、400㎡の敷地に人が住む家屋が1つであれば、200㎡までの部分が1/6になります。
(200㎡といった小さな部分だから「小規模」という名称と解されます。)
残りの200㎡部分は『住宅』の区分に該当し、1/3になります。


でも、その1つの家屋が二世帯住宅の場合は「人が住む家屋が2つある」として取り扱いされ、200㎡×2つの人が住む家屋=400㎡までが1/6になります。

ただし、この場合、その二世帯住宅が、家の中で行き来ができるようにつながっているなど、互いに独立した家屋構造ではないとされた場合は、人が住む家屋は1つとして取り扱いがされてしまいます。(1/6されるのは200㎡部分だけになります。)

 

【アパートなど共同住宅を建築したら】
500㎡くらいの敷地に、6室(所帯)の部屋数があるアパートを建築しました。
建っている家屋は1棟だけです。
でも、これは人が住む家屋が6つあるという取り扱いがされ、200㎡×6=1200㎡までが1/6の対象になります。
この敷地は500㎡(1200㎡以下)なので、全ての敷地が1/6になります。
このことは、アパート建築のメリットの1つに土地にかかる固定資産税が安くなるという効果があるということになります。

 

【まとめ】
皆さん如何だったでしょうか。フレッシュな気分を台無しにする「課税明細書」ですが、その中身をよくよく調べてみると、これまで知らなかった固定資産税のことが色々わかりました。
これを機会に、皆さんの課税明細書もよく確認してみて下さい。
もしかすると、1/6にしなくてはイケナイ課税標準額が、ミスで1/3のままであったり、7割にしかなっていない・・ということも「無い」とは言えません。
それは、過大な固定資産税を納めていることになります。
是非確認してみて下さい。

(文責:社員税理士 小竹 勝)

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