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朝日税理士法人のブログを掲載します。

◆ 必須だけど、今までとおりでOK ◆

2023年12月11日 BLOG

◆ 必須だけど、今までとおりでOK ◆

Q:電帳法の本格スタートまであと僅かだよ。でも何も準備ができていない(どうしよう)

A:慌てないで、大丈夫(今までどおりで)

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【一か八か突入!】
副操縦士:「機長、このままだと大変なことになります」
機長:「準備は出来ていないのか!」
副操縦士:「無理です。あまりにも複雑で、どこからどう手を付けたら良いのかわかりません」
機長:「うーん・・・やむを得ない」「それなら一か八かそのまま突入するまでだ」
副操縦士:「ラジャー!」

手に汗握る展開!一体どうなるか?!

副操縦士:「あれ・・・無事ですね」
機長:「本当だ無事だ」「一体どうやって切り抜けたんだ」
副操縦士:「別に…今まで通り、何も変えなかったのですが」
機長:「何も変えなかったって?詳しく報告してくれ」
副操縦士:「これまでどおり、飛んで来たモノは、一先ず印刷して、これまで同様にファイルして・・でも飛んで来たモノ自体はそのまま削除せず保管しておきました」
機長:「なるほど、今までと何も変わらないな」

さて、一体何の話やら

 

【今まで通りで大丈夫だった】
2人が、何ら特別な準備もせず、突入したのは、令和6年1月1日の日です。
そして、副操縦士が言う『飛んで来たモノ』とはインターネットメールなどに添付された請求書等の電子ファイルのことです。
ここまでお話すればお解りですね。
これは、あと3週間後に迫った電子帳簿保存法の本格適用についての話です。

皆さんご存じのとおり、来る1月1日より、電子帳簿保存法が本格的にスタートします。
そうなると何でもカンでも、電子媒体で保存しなければならず、そのために、タイムスタンプの利用や、専用の電子データ保存システムの導入が必要になる・・・何だか面倒なことになりそうです。
「10月のインボイス制度導入で、色々と面倒な思いをしたと思ったら、今度は電子帳簿保存法かよ」「勘弁して欲しいな」・・きっと皆さんはそう思われているでしょう。
でも?冒頭の機長と副操縦士の会話では、あまりにも複雑なことだけど、今まで通りで大丈夫だった・・とのことですよね。一体どのようなことなのでしょう。
その謎に迫ってみましょう。

 

【三つのうち二つは任意】
電子帳簿保存法には下記の3つがあります。
(1)  電子帳簿等の保存
会計ソフトで作られる貸借対照表や損益計算書、仕訳帳や総勘定元帳などを電子で保存する規定
(2)  スキャナー保存
紙媒体の請求書や領収書等をスキャナーにて電子保存する規定
(3)  電子取引データの保存
電子媒体で受け取った請求書等を電子にて保存する規定

読者:「3つもあるのか」「だから複雑で面倒なんだな」

筆者:「確かに3つ全てをキチンと原則どおりの基準で実施しようとすると、色々面倒です」
「でも3つのうち2つは『任意』つまり、電子保存してもしなくてもOKなのです」

読者:「えっ!そうなの」「DX化の時代だから、てっきり何でもカンでも電子化だと思ってた」「でっ・・どれとどれが任意なの?」

筆者:「(1)と(2)です」

読者:「えっ(2)のスキャナー保存は任意なの?」「スキャナーが任意ってことは、これまでどおり、紙媒体のまま保存していてもイイの?」

筆者:「そうなんです。いままで通り紙のままでもOKなんです」
「総勘定元帳も税務調査の際、紙ベースでOKなんです」

読者:「なーんだ、じゃーぁ(1)と(2)は、1月1日以降も何も変えなくてOKなんだ」
「何だか気持ちが楽になったよ」

 

【必須だけど、今までとおりでOK】
読者:「でも(3)の電子取引データは、必ず電子保存なんだろ」
「そうなると、タイムスタンプの利用や専用の電子保存システムの導入などしなくてはイケナクなるな」
「お金もかかりそうだし、導入して運用に乗せるのも大変だな」

筆者:「おっしゃるとおり、これは任意でなく必須になります」

読者:「でも、冒頭の機長と副操縦士の会話で『今までどおり、何も変えなかった』って言ってたぞ」
「だから、これも本当は『任意』じゃないの?」

筆者:「任意ではありません『必須』です」「でも、今までどおり、何も変えなくてOKです」

読者:「一体どういうこと?」

 

【例の作戦を再度使うしかない】
電子媒体の請求書や領収書などは、前述したとおり、この1月1日より電子での保存が必須となります。
その開始時期が迫る中、当局の会議室でこんな会話がありました。

当局職員:「ダメです、準備が整っていない模様です」

当局幹部:「何だと!あれほど周知しとけと言ったじゃないか」

当局職員:「民間ソフトメーカが『●●精算』とか『●●奉行にお任せあれぇ~』などのCMをバンバン流してくれていたので、それにお任せしていれば自然に周知できると思ったのですが・・」

当局幹部:「何っ・・・『お任せあれぇ~』にお任せしておけば良かっただと!何をふざけたこと言っているんだ・・(お任せあれぇ~にお任せ・・・面白いこと言うな・・)」

当局職員:「こうなったら、例の作戦使いますか」

当局幹部:「例の作戦・・かぁ・・・前回も使ったから今回は控えたかったんだが・・」

 

【宥恕措置】
「例の作戦」とか「前も使ったとか」何だか話がごちゃごちゃしてきましたね。
では、ここで、これらを整理してみます。

まず、例の作戦とは「宥恕措置」というものです。
これは、先ほど私(筆者)が、「任意ではありません『必須』です」「でも、今までどおり、何も変えなくてOKです」と申し上げた「今までどおりでOK」という措置です。

どのような措置かというと・・
電子で受け取った請求書や領収書等の電子取引データについては、タイムスタンプや専用のソフトなどを用いる等、法律に従った電子保存が必須であるが、やむを得ない理由がある場合は、その電子取引データを削除しないことを要件に、今まで通りプリントアウトして紙で保存するカタチで構わない・・という措置です。

つまり、今まで通りでOKということで。

次に、前も使ったとは・・・
実は、電子帳簿保存法は令和4年1月に既にスタートしています。
しかし、スタート当時は、この法令についての周知や納税者側の準備が殆ど出来ておらず、やむなく2年間(令和5年12月末まで)実質的なスタートをずらし、その期間は宥恕措置として「これまでどおりでOK」としたのです。

つまり、宥恕措置は、既に1回使っているのです。

あれからまもなく2年が経過し電子帳簿保存法はそれなりに周知され、そのためのツールであるタイムスタンプや専用ソフトはかなり充実してきました。

しかしながら、それでも大半の納税者は「準備万端」とは言えない状況です。

そこで、当局はやむなく、再度「宥恕措置」を設けることにしました。

ただし、この措置を選択するためには「やむを得ない理由」が必要になります。

 

【やむを得ない理由とは】
「やむを得ない理由」というからには、よほどのことが無い限り認めてもらえないカンジがしますね。
ご心配なく、その理由とは
・お金が無くて、専用ソフトなどが準備できない
・人手が足らなくて、準備ができない
このようなモノで十分なんです。

でも、その理由を認めてもらうためには、事前に税務署などへ申請が必要なのでは・・
このように思われる方・・・「ご心配無く」
この宥恕措置を受けるために、税務署に対し事前に申請など一切必要ありません。

(再び、コックピット)
機長:「そうなのか」「理由もこの程度のモノでよく、かつ事前に申請もいらないのか」

副操縦士:「どうもそうらしいです」

機長:「君!ナイスプレーだよ」
「君が何ら準備をしなかったお陰で、無事1月1日を通過することが出来たじゃないか」
「アッハッハッハ」

副操縦士:「これって・・褒められているのかな」


(文責:社員税理士 小竹 勝)

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