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朝日税理士法人のブログを掲載します。

◆ グローバル・ミニマム課税制度 ◆

2023年11月20日 BLOG

以前は、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)の納税額が極端に少ないというニュースが度々報道されていました。それが、近年においては、数百億ドル規模の納税をこれらの会社が米国において実施するというニュースが取り上げられています。いったい何が起こっているのでしょうか。

BEPS(Base Erosion and Profit Shifting)という考え方があります。日本語では「税源浸食と利益移転」などと呼ばれています。多国籍企業が、軽課税国などに、利益を移転して、課税を逃れているような状態を指します。OECD(経済協力開発機構)は、この状態を問題視し、世界共通の税法を作成し、これを加盟国に導入させ、BEPSを解消させようと尽力しています。この、世界共通の税法を米国が導入したことで、先述のGAFAは移転していた利益を 米国に還流することで、米国での課税を受け始めているのです。移転価格税制やタックスヘイブン税制などが、これに該当し、日本の法人税法でも導入されています。

この、第二段階として、日本の税制では、令和5年税制改正において法人税法の中にグローバル・ミニマム課税というものが創設されました。法人税法上の条文に、「各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税等」という新たな分野が盛り込まれました。適用初年度は、令和641日開始事業年度からです。概略としては、海外子会社の損益計算書に記載された、法人税等の金額が、税引前当期利益の15%に満たない場合には、15%に達するまでの金額を親法人が日本で納税しなければならないというものです。特徴的なのは、正解共通の税制なので、各国の税制に左右されぬよう、法人税法の条文に多々会計用語が用いられている点です。上記の算式からすると、過去に赤字が続き、回復基調にあるような外国子会社で、現地国の繰越欠損金の制度を利用して納税が無いようなケースでは、税引前当期利益の15%を日本において納税しなければならないのかと不安になります。これは、この条文の中で創設された「みなし繰延税金資産」を活用すれば、さすがに課税はされなくても済むことにはなりそうなのですが、この、「みなし繰延税金資産」の適用を受けようと思うと多岐にわたる書類の提出が求められます。ただし、グローバル・ミニマム課税の適用を受けるのは、多国籍企業の連結財務諸表の収入項目の合計が7億5千万ユーロ以上となる場合だけです。ここも特徴的です。日本の税法なのですが、世界共通のルールなので、金額の単位が日本の税法でもユーロが採用されています。もうすぐ、令和6年税制改正大綱が発表される時期にはなりましたが、海外に現地法人を持つような皆さんにおいては、令和5年の税制改正にも注意が必要です。ちなみに、グローバル・ミニマム課税はいわゆる法人税とは別の申告ですので、事業年度終了から1年半後に申告をすることになります。最初の申告は、令和89月末が期限です。

社員税理士 半田 茂

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