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朝日税理士法人のブログを掲載します。

◆ 確定申告期限が4月16日まで延長されました ◆

2020年3月10日 BLOG

◆ 4月16日まで延長されました ◆
Q:新型ウィルスの拡大が懸念されるね
A:その対策として確定申告期限が延長されたよ
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【申告期限が延長された】
感染が広がるコロナウイルス・・・大型客船やライブハウス・会合など、多くの人が集う場所で感染拡大が懸念されています。
この時期、税務の面でも人が集まる場所があります。それは『税務署』e-Taxなど電子申告が利用される時代になったとはいえ、それでも例年3月15日の確定申告を迎えるこの時期は税務署に多くの人が集まります。
「そこで(税務署に人が集まることで)、感染が広がっては大変」とのことで、先月27日に国税庁より下記のような発表がありました。
 
今般、政府の方針を踏まえ、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、申告所得税、贈与税及び個人事業者の消費税の申告期限・納付期限について、令和2年4月16日(木)まで延長することといたしました。
これに伴い、申告所得税及び個人事業者の消費税の振替納税をご利用されている方の振替日についても、延長することとしております。
 
これにより、3月16日(月)を期限とする所得税と贈与税が一ヶ月先の4月16日まで、個人事業者の消費税(3月31日期限)についても同日まで申告期限が延長されることになりました。
 
この発表から数日後、大阪の下京税務署と高松の須崎税務署において職員の感染が判明し申告窓口業務が一時中断される事態が発生しました。
 
「なるほど、このような事態が日本中の税務署で発生しては大変だ。でも、今回の措置で申告期限が後ろにずれれば、納税者の集中を分散させることが出来る。よって、このような事態を極力抑えることができるかもしれない」・・筆者は国税庁の発表を受けこのように思いました。
 
【地域ではなく対象者の指定】
さて、国の税金については所得税法・法人税法・消費税法等々数多くの税法があります。この各種税法に共通する事項を取りまとめた法律に「国税通則法」というモノがあります。
この国税通則法には、一定の事由が生じたときに、本来の申告期限に拘わらず、国税庁長官等の判断で、その期限を延長できる定めがあります。
この延長には「(1)地域指定による延長」「(2)対象者指定による延長」「(3)個別指定による延長」の3つがあります。
 
「(1)地域指定による延長」とは、災害その他やむを得ない理由により国税庁長官が地域と期日を指定して延長するモノです。
条項には「国税庁長官は、都道府県の全部又は一部にわたり災害その他やむを得ない理由により」と規定しており、先の震災や豪雨被害では、該当する地域を指定してなされました。
 
「(2)対象者指定による延長」とは、災害その他やむを得ない理由により期限内に申告が出来なそうな納税者が多く居る場合、国税庁長官が対象者の範囲と期日を指定して延長するモノ、そして
 
「(3)個別指定による延長」は納税者が「諸処の事情により期限までに申告が出来ない旨を説明し」所轄税務署長に延長を申請するモノです。
 
さて今回はどのカタチの延長なのだろう・・日本各地に感染報告がなされているので全ての都道府県が指定される「①地域指定による延長」なのか、それとも・・・あれこれ考えていると、月が明けた3月6日に国税庁告示第1号として『国税通則法施行令第3条第2項の規定に基づき国税庁長官が同項に規定する対象者の範囲及び期日を定める件』というタイトルで告示がありました。
 
この第3条第2項とは「②対象者指定による延長」です。今回の感染の広がりで、申告期限までに申告することに支障を生じる人が多数生ずると国税庁は判断し全ての申告所得税等の納税者を対象としたのでしょう。
 
【青色申告の承認申請はどうなるの】
青色申告というモノがあります。これは、納税者が複式簿記でキチンと帳簿を付けている場合、様々な税務上の恩恵を受ける制度です。
 
所得税において、この青色申告をするためには税務署に申請をして承認を得る必要があります。
この申請の期限は、その年の3月15日と規定されています。
令和2年度より青色申告を受けるためには、今年の3月16日(15日が日曜日であるためその翌日の16日)がその期限です。
 
さて、今回、コロナウイルス感染拡大の影響で、所得税の申告期限が4月16日まで延長されました。では、青色申告の申請期限もそれに合わせて延長されるのでしょうか。
 
2月27日の発表の際には、そのことの記載がなく、専門家の間では「単に申告期限が延長されただけであり、青色申告の申請期限は延長されない」つまり3月16日のままであるとの憶測がありましたが、7日の告示では期限延長の対象となる主な手続として所得税の確定申告と並び青色申告の承認申請も列挙されました。これにより申請期限は4月16日まで延長されることが明確になりました。
これ以外に青色事業専従者給与に関する届出(変更届出)や減価償却方法の届出や変更承認申請、相続税法における相続時精算課税の選択届出などいくつかの申請・届出についても期限が延長されました。
 
【住民税はどうなるの】
3月15日(今年は16日)は所得税の確定申告だけではなく個人の所得にかかる住民税の申告期限でもあります。
現在のシステムでは、所得税の確定申告をすると自動的に住民税の申告をしたことになります。つまり、所得税と住民税は同じタイミングで申告がなされます。
よって、今回のように所得税の申告期限が延長されても、住民税の申告期限が延長されなければ、結局納税者は3月16日までに申告書を作成しなければならず、延長の意味が無くなってしまいます。
これについて総務省は、国税庁から最初の発表があった先月27日に、全国の都道府県と市区町村の税務担当部門に対して「国税庁が申告期限の延長をしたのだから、地方においても適切に運用して欲しい」という趣旨の事務連絡を出しました。
 
これを受け、多くの都道府県や市町村は申告期限の延長を行いました。
これにより、国税である所得税と地方税の足並みは揃いましたが、若干の混乱はありそうです。
 
個人にかかる住民税は翌年の6月より徴収や納税が開始されます。しかし今回のように申告期限が1月延びると手続きの問題で6月に間に合わず、例えば納税のための通知(6月に納税者の手元に送られてくる通知)に確定申告の内容が上手く反映できないケースもありそうです。(一部の自治体では、既にその懸念を示しています)
 
更に、国民健康保険料の通知にも影響がありそうです。この保険料は住民税の所得に応じて計算されます。今回の延長で住民税の確定が遅れると、保険料計算事務に支障をきたし、その結果、被保険者に対しての保険料通知が遅れたり、申告内容が十分に反映しない通知が届く懸念が心配されます。
 
【法人税はどうなるの】
今後、感染が広がってしまい、例えば経理担当者が隔離され経理事務が滞ってしまったり、感染の防止のため従業員が出勤できず、休業を余儀なくされる等々で、期限内申告が難しくなる法人が出てくる可能性があります。
このような場合はどうなるのでしょうか。
 
これについて、先般の国会(3月3日参議院の予算委員会)にて国税庁より以下のような趣旨の答弁がありました。
 
「今般の所得税確定申告等の申告期限延長は、感染拡大を防止するため一定の期間に集中して税務署に多くの人が集まらないようにするための措置である」
「一方、法人の場合はそれぞれ決算期が別々で、個人の確定申告のような税務署に人が集中することはない。故に一律に延長するような措置はとっていない」
「しかしながら感染拡大により経理事務が滞るなど期限内に申告ができない法人については、個々の法人の申請を受け、個別に対応していく」
とのこと・・
つまり、法人税については「(3)個別指定による延長」により対応するようです。
まだまだ拡大が懸念され、収束の見通しが立たないコロナウイルスです。万が一感染してしまいその影響で申告等に支障が生じた場合は、今回の延長の制度を上手に使って欲しいと思いますが、まずは手洗い・うがい・マスク・人混みにはいかないといった予防対策をしっかりとり体調には十分気を付けてください。
                                           (文責:代表社員税理士  小竹 勝)

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