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朝日税理士法人のブログを掲載します。

◆ 110万円の贈与税基礎控除は廃止されるのか? ◆

2022年8月8日 BLOG

◆ 110万円の贈与税基礎控除は廃止されるのか? ◆

 

Q:贈与税の基礎控除が廃止されるって心配する声を沢山聞くよ

 

A:基礎控除は廃止されないと思うよ。ただ、別の見直しはあると思うよ

 

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【贈与税ってペナルティ?】

「110万円って廃止されるのですか」・・以前より、このような質問を頻繁に受けるようになりました。

この「110万円」とは贈与税の基礎控除のことで、贈与受けた場合、その合計が年110万円までであれば、贈与税は課されません。

このような質問を頻繁に受けるのは、贈与税の基礎控除額が廃止されるのではないかという不安を多くの皆さんが持っているからだと思います。

何故そのような不安を持つのでしょうか。

それは、令和3年度と翌4年度の(二度の)税制大綱に「相続税と贈与税の一体課税」と称して「今後贈与税は見直すかもしれませんよ~」的なことが示されたためです。

何故このようなことが示されたのか・・・それは「贈与税がその役割を十分に果たしていない」と国税側の偉い人達が思っているためと推測されます。

 

突然ですが、ここでクイズです。

「法人税」は「法人税法」という法律にて定められています。

「消費税」は「消費税法」という法律にて定められています。

それでは「贈与税」は何という法律により定められているでしょうか?

えっ?「贈与税法」??・・残念「贈与税法」という法律は存在していません。

答えは「相続税法」です。

「贈与税」は「相続税法」という法律に定められており、「相続税」を保管する税という位置づけになります。

保管する税とは、(簡単に言えば)ペナルティ的な税という意味です。

 

【むかしむかしのお話】

むかし、むかし、あるところに沢山の財産を持っているおじいさんがいました。

「こんなに沢山の財産を持ったまま、万が一のことがあったら、子供達に大変な相続税が課される」おじいさんは「何か良い方法が無いか」と三日三晩考えました。

そして「そうだ、ワシが生きている間に、子供達に財産をあげてしまうおう」「そうすれば、万が一の際には、財産が無いから相続税は課されない」「なんという名案」おじいさんは早速財産を次から次へと子供達に贈与しました。

これを聞いていた税務署は「そんなことされたら相続税を課すことができない」「そうだ、そうならないように、贈与には、相続税よりももっと厳しい税金を課そう」ということで、相続税を保管する税(ペナルティ)として贈与税が誕生しましたとさ・・

このように誕生した贈与税は確かに厳しい(税率が高い)税金となっております。

例えば、相続税は1000万円に対して10%の税率ですが、贈与税は1000万円に対して(最も高いところで)30%とか40%の税率が課されます。

 

【110万円の基礎控除を何とかしたい】

「ペナルティのはずなのに逆に節税に使われている」国税側の偉い人達は、今の贈与税について、このような印象を持っています。

その理由は、さきのおじいさんのように110万円の基礎控除を使って毎年毎年繰り返し、贈与をする例が多発しているからです。

贈与税は、相続税に比較して高い税率ですが、一定の贈与額については税率が0%の部分があります。これを基礎控除と言い、年間110万円までの贈与であれば、贈与税が課されないのです。

この基礎控除を使えば、1100万円の財産を小分けに10年間かければ、無税で贈与することができ、本来相続税が課される財産を減らすことが出来ます、これでは、ペナルティどころか、贈与税の仕組みが相続税の節税の道具になってしまいます。

国税側の偉い人達が「110万円の基礎控除を何とかしたい」と考え、故に「今後贈与税は見直すかもしれませんよ~」的なことを税制大綱に記載させるのも分かるような気がします。

 

【持ち戻し期間を伸ばす】

それではどの様に見直そうとしているのでしょうか?

まず考えられるのが「持ち戻し期間を伸ばす」というモノです。

「持ち戻し」とは、「贈与したんだけど、税金の計算上は贈与でなくて相続されたとみなします」というモノです。

どのようなことかと申しますと、亡くなるときからあまり期間が離れていない贈与は「それは、亡くなるときに近いタイミングでなされた贈与だから、相続したものとみなそう」というもので、その期間は相続発生の3年以内ということになっています。

つまり、3年以内に110万円以下の贈与をして贈与税が課されなくても、その贈与は相続されたモノとみなし、相続税が課されるということです。

日本はこの持ち戻し期間が3年以内です。

一方、欧米諸国では7年だったり10年たったり、15年だったりします。

この欧米諸国に対し日本の3年間はあまりにも短く、結果、この期間以前の基礎控除以下の贈与が相続税の節税に使われていることから、この持ち戻し期間を欧米並みに伸ばそうと国税側の偉い人達は考えている模様です。

 

【贈与時には課税しない】

「贈与税は課税しない」このように(大胆な)見直しをするのではないか!という噂もあります。

「それはとっても嬉しい!」・・皆さんは思うかもしれませんが、そんなに甘くありません。

偉い人達が考えていると思われる内容は「贈与税は課さないけど、贈与をした場合は、それを税務署に教えてね(報告してね=申告してね)」というモノです。

何故このような考えが噂されているのか?それは税制大綱に「相続税と贈与税の一体課税」ということが示されているからです。

そもそも、偉い人達は「最終的に相続税を漏れなくきっちり課税できれば、それで良い」と考えています。

だから生前中に贈与したモノは、税務署が把握して、相続が生じた際にまとめて課税できるように(贈与税を課さない代わりに)贈与の事実の申告=報告をしてもらう制度にする。

そうすることで、贈与についても相続税として一体に課税ができると考えています。

 

【相続時精算課税を使う】

ただ「贈与税は課さない」というのはあまりにも大胆なので、「贈与税は課すけど、贈与税はペナルティ的な税率だから、もし高く取り過ぎていたら相続税のときに精算するね」という制度にするのではないか・・・とも噂されています。

これを読んで「それって・・何かと似ていない」と思う読者の方もいらっしゃるのではないでしょうか・・

そうです、この制度は現在の贈与税の税制にもあります。

それは「相続時精算課税」という制度です。

この制度は、通常の贈与税の基礎控除である110万円の20倍以上である2500万円の基礎控除があります。

ただし、110万円の基礎控除が毎年使えるのに対し、相続時精算課税の2500万円基礎控除は贈与者1名に対し1度しか設定されず、その者からの贈与は生涯この基礎控除枠だけになります。

それでも2500万円という基礎控除はとても大きいので、110万円の通常の贈与制度よりもメリットがありそうですが、相続時精算課税制度を使うと相続開始3年以内でなくても、全て相続税の対象になってしまいます。

つまり、偉い人達が実現したい「最終的に相続税を漏れなくきっちり課税」できる制度であることから「わざわざ、新しい制度をつくらずとも、既存のこの(相続時精算課税)をそのまま、全ての納税者に使ってしまおう」という噂もあります。

 

【基礎控除は廃止されない】

このように見直しが噂されているのは

①持ち戻し期間の延長・・現行3年を欧米並みの期間にする

②全ての贈与の事実を申告してもらう(税務署が贈与の全てを把握する)

③現行の相続時精算課税を全ての納税者に適用する

 

このようなモノでした。

そのどれにも「110万円の基礎控除を廃止する」ということは想定されていません。

だから「基礎控除は廃止されない」と思います。

なぜなら、基礎控除を廃止してしまうと、どんなに少額な贈与であっても全て課税の対象になってしまう・・そんなことしたら税務署はパンクしてしまうからです。

それと国税側の偉い人達は、贈与であっても最終的に相続税を課することができる制度(贈与税と相続税の一体課税)をしたいと考えており、110万円の基礎控除に目くじらを立てている訳ではないのです。

参議院選挙も終わり、次の税制改正は選挙を意識せず、行うことができます。

そうなると、国民の生活に直結する税制改正は行い易くなると言われています。

さて、どうなることやら・・次の改正の動向をしっかり見ていきましょう。

 

(文責:社員税理士  小竹 勝)

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