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朝日税理士法人のブログを掲載します。

◆ 特別メニューで相続税も贈与税も課されない? ◆

2023年1月10日 BLOG

◆ 特別メニューで相続税も贈与税も課されない? ◆

Q:相続税に加算される期間が3年から7年に延長されてしまうよ

A:そうなると増税になるかも、でも特別メニューを使うと増税が回避できるかもよ

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【何か短すぎる?】

「3年では短すぎる!」・・課税当局の偉い人は、ずっと思っていました。

一体何のことか?何のこと

それは「生前贈与加算」というモノの適用される期間について「短い!」と言っているのです。

「生前贈与加算」とは・・・

相続税は、相続の際、残された財産に課税がされる税金です。

よって、この財産が多ければ多いいほど大きな相続税が課されます。

そこで、生前中に子などに小分けにして(毎年)贈与を繰り返し、相続税節税をするケースが多くあります。

「小分け贈与を繰り返すことで相続税を減らされてはたまらない!」

ということで、相続発生前一定の期間内に贈与したものは、相続財産に加算して相続税の課税対象に加える・・これが生前贈与加算というモノです。

現行この期間は相続発生前の「3年間」となっています。

この期間について「短い!」と偉い人が思っているのです。

 

【3年では何故短いのか?】

欧米諸外国では、この期間は7年~10年などになっています。国によっては、終身=つまり、生涯行った贈与の全てが加算対象になるケースもあります。

これに比べて日本の3年はあまりにも短く、これ(3年)よりも前に繰り返される贈与による相続税の節税が多く見受けられていました。

どのようなことかと言うと・・

贈与については、贈与税という税金が課されます。ただし贈与のすべてに税金が課される訳ではありません。

この税金には110万円という基礎控除枠があり、それ以下の部分は贈与税が課されず次の世代に承継ができます。(財産を減らすことが出来ます。)

仮に110万円を超えていても、その部分が少額であれば大きな税額にはなりません。

このように税金が課されない、もしくは小さな税金で済む部分について現在の制度では、相続発生の3年よりも前に贈与してしまえば相続税の対象にはなりません。

これを使って多くの資産家が相続税を逃れているという指摘が予てからありました。

 

例えば85歳で相続を向かえたとした場合、その3年前の82歳の前に行った贈与が相続税節税の対象になります。

82歳といえば年齢的に相続税節税を十分に意識している段階です。

「そんな段階(とき)に行った贈与が、相続税節税に直結するのは大いに問題あり」

このように課税当局の偉い人は思っていたのです。

 

【3年から7年に延ばされてしまう・・増税】

そこで、先の税制改正大綱で「その期間を7年に延ばす。」ということが盛り込まれました。

これまで3年であったモノが、その倍以上の7年に延ばされることとなったのです。

「倍以上の期間に延ばすのはあんまりだ!」

きっとこのような意見が出ることを想定してなのか否かわかりませんが、4年前~7年前の期間に行った贈与について「100万円引きますよ」ということになっています。

 

例えば、毎年110万円を相続開始まで7年間贈与したケースで見てみると、改正前と改正後では下記のように異なります。

★改正前・・

(1)         毎年の贈与については110万円以下(基礎控除以下)なので贈与税は課されない。

(2)         しかしながら相続の際は、110万円×3年間=330万円は相続財産に加算される。

★改正後・・

(1)         改正前同様、毎年の贈与については110万円以下(基礎控除以下)なので贈与税は課されない。(これは同じ)

(2)         相続の際は、これまで同様に110万円×3年(1年~3年前)=330万円が加算されることに加え、

110万円×4年(4年前~7年前)-100万円=340万円についても加算される。

これにより、改正前に比して340万円増の670万円が相続財産に加わることになる。

このようになります。

 

【110万円の贈与・・なんとかならないの?】

贈与税の基礎控除枠110万円を使った相続税節税は、これまでかなり広く使われてきました。

これが、7年前まで遡り相続財産に加えられてしまうことで

「これじゃ・・相続税を節税することができない」

という不満が聞こえてきそうです。

そこで・・・「じゃんじゃじゃーん♪」(なぜかファンファーレの音)

「特別メニューを準備しました!」by課税当局

「110万円までであれば、贈与税も課されませんし、3年以内であろうが、7年以内であろうが、相続税も課税しません!そんなメニューです」by課税当局

 

【夢のような方法・・その正体は】

「110万円までであれば、贈与税も相続税も課されないって・・・そんな夢のような、モノがあるの」・・・ちょっと耳を疑いますよね。

実は、今回の税制改正大綱に、この耳を疑うような制度が記載されていました。

それは「相続時精算課税制度」です。

 

【相続時精算課税制度とは】

これは、祖父母や父母など直系尊属から贈与を受ける際、2500万円までの基礎控除枠までは、贈与税が課されない制度です。

仮に2500万円を超えた場合であっても、その超えた部分には20%の贈与税だけで済まされます。(年齢制限あり)

贈与税が課されない(もしくは少ない贈与税の負担で済む)ため、生前中の財産承継に広く使われてきた制度です。

ただし、読んで字のごとく、相続時精算課税=「相続の時に精算する」制度であるため、この制度を使った贈与財産は、全て相続財産に加えられます。

 

【相続時精算課税で110万円贈与すると・・】

今回の税制改正大綱にはこのようなことが記載されていました。

「相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、現行の基礎控除とは別途、課税価格から基礎控除 110 万円を控除できることとするとともに、特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等をされる当該特定贈与者から贈与により取得した財産の価額は、上記の控除をした後の残額とする。」

これを読むと

・相続時精算課税制度を利用している人が

・祖父母、父母(制度利用者に限る)から贈与を受けた場合

・2500万円の基礎控除枠とは別に毎年110万円の基礎控除枠を準備するから、この部分については贈与税を課税しないよ

・なおかつ、この110万円を使って贈与課税がなされなかった部分は、相続財産への加算対象にもしないよ

このようなことであり、確かに「110万円の範囲であれば、贈与税も相続税も課税しない。」とされています。

 

【予想外!】

これは、我々税務業界では予想をしていなかった内容です。

それは(予想していなかったのは)何故か?

相続時精算課税とは、前述したとおり「相続の時に精算する=相続財産に加算する」ことが大原則の制度です。

そのような大原則を持つ相続時精算課税が、「110万円以下の部分は、相続財産に加算しない」というのは、「精算課税らしからぬ」ことです。

そもそも冒頭に記した「3年では短すぎる」という意見は

「生前贈与は相続税の課税回避につながるので好ましくない」

という考えに基づくモノで、課税当局はこれを正すためには

「相続税と贈与税は一体化すべき」

と主張してきました。

そしてこの「相続税と贈与税の一体化」の最たるものが、贈与した財産を相続に時に加算する「相続時精算課税」なのです。

 

その、相続時精算課税自らが

「110万円の贈与については加算しない」

としているので、我々税務業界の人間は「精算課税らしからぬ」ということで予想外という印象をもったのです。

 

【課税当局の思惑】

だた、冷静に考えてみると、これは課税当局の作戦だと思われます。

課税当局は「相続税と贈与税の一体化」である「相続時精算課税制度」をもっともっと利用させたい。

それであれば、今回の改正で生前贈与加算の期間を3年から7年に延ばすことで贈与が相続税節税対策として使いにくい状態を作る一方で、

相続時精算課税については110万円贈与部分について甘くすることで、一体化制度である「相続時精算課税制度」に資産家を誘導し110万円を超える部分についての贈与の全てを相続財産に加えたい(=相続税と贈与税の一体化を促進したい)という思惑があると解されます。

 

【でも、有効な節税方法であることには変わりない】

そのような思惑が見え隠れしていますが、それであっても、110万円までの贈与を行う場合、相続時精算課税を使うと贈与税も相続税も課されないのは確かです。

そうであれば、この制度を使うことも贈与・相続税節税にとって重要な選択枝であることは確かなことです。

ただし、今回の税制改正で、贈与について「相続時精算課税を選択すべきか否かといった」選択枝の判断は複雑になったと思います。

よって、実際に相続時精算課税制度を使う場合、税の専門家に良く相談することをお勧めします。

もちろん朝日税理士法人は、その相談対応体制をばっちり整えています。

(文責:社員税理士  小竹 勝)

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