今年も残すところ3ヶ月、各会社では平成最後の年末調整の準備が始まる時期ではないでしょうか?
今年は配偶者控除等の大幅な改正で、従来とは提出を求める書類にも変更があります。前年からの変更点を把握しつつ、注意点を考えます。
☆経理としての注意点
1.従業員から提出を受ける書類が2枚から3枚へ
〔改正前〕
① 翌年分の扶養控除等申告書
② 給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書
〔改正後〕
① 翌年分の扶養控除等申告書
② 給与所得者の保険料控除申告書
③ 給与所得者の配偶者控除等申告書
2.配偶者控除の適用を受ける従業員からも「配偶者控除等申告書」の提出を受けることが必要
配偶者控除の改正内容はすでに朝日税理士法人だよりVOL.156(Mar.1 2018)でお伝えしましたが、給与所得者の合計所得金額に上限額(1,000万円)が設けられ上限額以下の所得金額は①900万円以下、②900万円超950万円以下、③950万円超1,000万円以下の3段階に区分し、その配偶者の合計所得金額が38万円以下の場合は、配偶者控除の額がそれぞれ38万円(上記①)、26万円(上記②)、13万円(上記③)と逓減されるしくみになりました。
配偶者特別控除の適用に当たっても、給与所得者の合計所得金額の上記3区分とその配偶者の合計所得金額(38万円超~123万円以下)の9区分に応じて控除額が異なります。
配偶者控除と配偶者特別控除ともに、給与所得者本人と、その配偶者の所得により控除額が変化するため、改正前は不要であった配偶者控除の適用を受ける従業員からも「配偶者控除等申告書」の提出を受ける必要があります。
扶養控除申告書に「源泉控除対象配偶者」の記入がある場合は、「配偶者控除等申告書」の提出が必須となります。
3.「配偶者控除等申告書」には本人と配偶者の平成30年合計所得金額の見積額の記入が必要
「配偶者控除等申告書」では新たに、給与所得者及び配偶者の合計所得金額見積額の計算表や判定区分、控除額の計算欄等が追加されました。
見積額の計算については、各給与所得者がそれぞれ直近の源泉徴収票や給与明細書を参考に行うことになります。
4.従業員に周知する事項は?
注意点としては、合計所得金額の見積額の記入です。所得の計算は未経験者にはなかなか厄介ですので、以下の事項を従業員にもしっかり説明することをおすすめします。
① 従来の「保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書」が2枚に分離したこと
② 配偶者特別控除の適用範囲が拡大したこと(配偶者の収入が給与所得だけの場合、収入金額が2,015,999円以下の方まで控除額があります)
③ 配偶者特別控除だけでなく配偶者控除を受ける従業員も申告書を提出すること(配偶者の収入が給与所得だけの場合、収入金額が1,030,000円以下の方です)
④ 従業員と配偶者の平成30年の見積所得金額の記入が必要なこと(収入と所得は異なるので様式裏面の給与所得の計算方法を参照すること)
5.年末調整後に配偶者控除等の見積額に差額が生じた場合は?
年末調整が終わった後、配偶者控除等の適用を受けた給与所得者やその配偶者の合計所得金額と確定した合計所得金額に差額が生じ、配偶者控除等の控除額の区分が変わった場合は異動後の状況により、年末調整の再調整を行うことができます。
ただ年末調整の再調整ができるのは、翌1月末の「給与所得者の源泉徴収票」を交付するまでとなり注意が必要です。
6.補足
年末調整で配偶者控除や保険料控除の適用を受けない場合、各申告書の提出義務は生じませんが、会社側としては各従業員の控除適用状況を正確に把握する目的から、すべての従業員から提出を受け、保管を徹底すべきと思われます。不明な点は当法人各担当者にお問い合わせ下さい。
(文責:横浜北支店 三上典子)