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朝日だより

平成30年度税制改正に伴う所得拡大促進税制(朝日税理士法人だよりVol.160)

2018年07月01日 朝日税理士法人

◆所得拡大促進税制とは

    平成25年度税制改正で創設され、賃上げに対するさらなるインセンティブを与えるため平成29年度税制改正で改正が施された現行の所得拡大促進税制は、多くの企業で適用され、税額控除の恩恵を受けた企業も多いことかと思われます。
    そもそも、当該税制は近年の厳しい雇用情勢の中、低位の水準に留まっていた所得水準の改善を通じた消費喚起による経済成長を達成するため、給与等支給額の増加を促す措置として創設された制度であります。
    当該税制は平成30年3月31日までの間に開始する各事業年度において適用ができ、今年で適用が終了しますが、平成30年度税制改正により適用条件の改正等が施された上で、制度が継続されることとなりました。
    現行の制度は、賃上げに積極的な企業には税額控除の「アメ」を与えるという制度とも言え、「アメ」が継続されるということは、企業にも従業員にとっても喜ばしいことかもしれませんが、今回の改正により、当該制度は「アメ」だけではなく「ムチ」を与えるという厳しいものとなりました。
    そこで、平成30年度税制改正の内容を確認したいと思います。

◆改正内容
    現行の「所得拡大促進税制」の適用要件は以下の3つでした。

①雇用者給与等支給増加額の基準雇用者給与等支給額と比較し一定割合(平成29年度は5%(中小企業者等は3%))以上増加していること
②給与等支給額が前事業年度以上であること
③継続雇用者の平均給与等支給額が前事業年度比2%以上増加していること(中小企業者等は前事業年度を超えていること)

    平成30年度税制改正では「賃上げ」という要件だけではなく他の要件も追加されることにより、「賃上げ・設備投資促進税制」と改組されており、以下のような内容となっております。

①<賃金要件>継続雇用者の給与等支給額が前事業年度より3%(中小企業者等は1.5%)以上増加していること
②<設備投資要件>国内設備投資額が当期償却費総額の90%以上であること(中小企業者等は不要)

上記要件を満たせば、給与等支給増加額の15%の税額控除が認められ、かつ、
③ <教育訓練要件>教育訓練費が前期及び前々期の教育訓練費平均額の1.2倍以上であること
という要件を満たせば、税額控除率が5%上乗せ(つまり20%の税額控除)されます(いずれも法人税額の20%を限度額とし、中小企業者等も同様)。
    なお、中小企業者等の上乗せ措置については、賃金要件が2.5%以上であり、かつ、教育訓練要件が前期の1.1倍以上であること、もしくは経営力向上計画に記載された経営力向上が確実に行われたことを証明すれば、税額控除率が10%上乗せ(つまり25%の税額控除)されます。

 

◆大企業では…

一方、大企業に対しては、

①<所得が増えているにもかかわらず…>当期所得が前期所得を上回る
②<賃上げに積極的でない…>平均給与等支給額が比較平均給与等支給額を超えない
③<設備投資に積極的でない…>国内設備投資額が減価償却費の総額の10%を超えない

といずれにも該当する場合には、研究開発税制等の税額控除を適用しないこととされました。

    つまり、賃上げと設備投資に積極的な大企業には控除税額の拡大という「アメ」を与える一方、所得が増加しているにもかかわらず、賃上げや設備投資に消極的な大企業には研究開発税制等の適用を受けられないという「ムチ」を与えるという、「アメとムチ」の改正となっております。

最後に、要件判定にあたっては、賃上げ、設備投資、教育訓練の3つの観点で行うことから、経理実務担当者の事務負担が増えることが予想されますので、お早めに担当者へご相談ください。

                                                                                                                                          (文責:関内本店 國分 周)

 

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