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朝日だより

税金対策と言われる決算賞与の危険性(朝日税理士法人だよりVol.158)

2018年05月01日 朝日税理士法人

(◆決算賞与の目的は?

 「今年は例年になく業績が好調で、このまま決算を迎えると高い税金を払わなければならない。設備投資をしたので資金繰りも苦しいから、決算賞与を支払って税金を安くしたい。」
 利益が出たから従業員に還元すれば、仕事に対するモチベーションも上がるし、税金が安くなれば節税対策として申し分ない・・・と考える社長も多いと思います。
 しかし、そこに潜む危険性も十分理解してから実行しなければなりません。

◆税金が安くなれば良いのか

 5,000万円の利益(課税対象)が出た場合、決算で支払う税金は約1,750万円(35%)にもなります。
 決算賞与を2,000万円計上すれば、納税額は約1,000万円に減ります。
 しかし、冒頭の“資金繰りも苦しいので”を考えると、750万円の税金が安くなる代わりに2,000万円の出費が待っているのを忘れないでください。
 社会保険料の会社負担などを考えると2,300万円くらいの出費になるので、1,550万円以上の支払増加の資金繰りを考えなければなりません。
 また、決算賞与をもらった従業員は、モチベーションが上がる代わりに翌年以降も決算賞与を期待します。
 翌年に、資金繰りなどの理由で決算賞与が支払われなければ、「同じように仕事をこなしていたのになぜ?」と不満の声が上がるのではないでしょうか。
 将来的な会社の状態が把握できていなかったり、決算賞与に対する明確な説明をしていなければ、良い結果を生むとは言い切れません。

◆決算賞与の支払方法

 とは言え、資金繰りに余裕があればメリットも多い決算賞与を活用しない手はありません。
 賞与は、原則として“支払った時(事業年度)の損金”となります。
 決算賞与を損金にするには、「決算期末日までに支払う場合」と「決算の翌月末日までに支払う場合」の二種類があります。

◆未払賞与の条件

 決算期末までに支給が終了していれば問題ありませんが、支払っていない賞与を今期の損金とするためには、次の3つの要件を満たさなければなりません。

 ①事業年度終了の日までに、賞与の支給額を、各人別に、支給を受ける全ての使用人に対して通知をしていること
 ②事業年度終了の日の翌日から1ヶ月以内に全額支払うこと
 ③決算時に、未払賞与として経理処理すること

 さほど難しい手続きではないので安易に考えがちですが、見過ごすと大変な落とし穴もあります。

◆給与規定の確認を

 一般的には、労働協約や就業規則(給与規定)における賞与は、次のような文章になっていると思います。
『賞与は、支給算定期間に在職し、かつ賞与の支給日に在職している社員に支給する』賞与の支給日にいない人には賞与は支払いませんという考えです。
 これを決算賞与に当てはめると、期末に支給額を決めて通知はしたけれども、翌月末に支払う時までに辞めてしまったら、その人には決算賞与を支払わないことになります。
 このような規定であったら、“税金を安くするための決算賞与”には該当しなくなります。
 でも、辞めた人がいなければ、予定通り全額支給するから良いのでは?と思われますが、それでも該当しません。 税法では、上記のような規定であれば、決算賞与の要件①の“通知をしている”に該当しないと決められているからです。
 この場合には、原則に戻り、支払った時(事業年度)の損金となるので、当期の税金対策として考えていたものが無駄になってしまいます。
 未払賞与を税金対策とするためには、給与規定をこれに見合うように変更しておく必要があります。
 給与規定を確認して、問題がありそうならば、事前にご相談ください。

                                                                                                    (文責:関内本店 青野俊彦)

 

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