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朝日だより

「暦年贈与」は始めの一歩(朝日税理士法人だより資産税版Vol.91)

2018年06月01日 朝日税理士法人だより 資産税版


生前贈与で相続対策
    相続税対策で「生前贈与」という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。
  相続税の計算方法を簡単にご説明すると、亡くなられた方が死亡時に所有している財産から負債を引いた純資産を基に税額を計算するので、亡くなられた後に財産を減らしても意味がありません。そのため、相続税額を少なくするためには生前中に対策を行う必要があります。
    今回はその相続税対策の一つである生前贈与の中から、はじめの一歩として「暦年贈与」という方法をご紹介します。

暦年贈与でコツコツ贈与
  贈与税の計算には基礎控除が110万円あり、贈与した額が年間(1月1日~12月31日)110万円までは贈与税が課税されません。資産家の方から見ると年間110万円は「なんだか少ないなぁ・・・」と思われるかもしれませんが、この制度は贈与を受ける人毎に110万円の基礎控除があるので、贈与する側から見れば、4人に贈与した場合は年額440万円、10人なら同1,100万円。さらにそれを10年間続けると×10に・・・と相続税がかかる財産が減っていきます(贈与する相手は誰でも可能ですが、現実的に考えると親族に贈与する場合がほとんどです)。つまり「暦年贈与」は、相続までにある程度の時間的余裕があるときに効果が見込める節税方法です。
    例えば2億円の課税財産があり相続人が配偶者、子供2人の場合に、子供2人に毎年それぞれ110万円を、亡くなる3年以上前(下記①参照)の過去10年間にわたって贈与した場合、何もしなかった場合と比べて相続税総額が下がります(法定相続分で財産を取得し、配偶者控除利用前)。

暦年贈与の注意点
①相続前3年以内の贈与財産は相続財産に加算
  お亡くなりになる前3年以内に推定相続人へ贈与した財産は、たとえ110万円以下であっても相続財産に加算して相続税を計算しなくてはなりません。ただし、推定相続人ではない方への贈与(例えば代襲相続人ではない孫など)は加算されませんので、その点を考慮して贈与をご検討ください。

②連年(定期)贈与にならないように
  暦年贈与では、110万円を10年間贈与すると合計で1,100万円になりますが、基礎控除があるため、贈与税はかかりません。しかし1,100万円をはじめから渡すことを約束して10年に分けて贈与した場合は、最初の年に1,100万円を受け取る権利を贈与したとみなされ、高額の贈与税[(1,100万円△110万円)×40%△125万円=271万円]が課税されます(一般税率の場合)。
     そうならないためにも毎年贈与契約書を交わす、口座振替などで贈与した証拠を残す、贈与後は贈与を受けた人に贈与財産をしっかりと管理してもらう、などの対策が必要です。

③名義預金とみなされる可能性
 名義預金とは名義が本人以外のものであっても、実質的には本人の預金であるとみなされる預金のことで、相続時には本人の相続財産として相続税が課税されてしまいます。
    よくあるケースがお子様の名義で通帳を作って毎年110万円を振り込み、通帳と印鑑は親が管理しているためお子様はその存在を知らない、というものです。これは親の財産とみなされてしまいますので、必ずお子様に贈与されたことが明らかになるように上記②の方法を守って贈与を行いましょう。

終わりに
  どのような相続対策を行うにせよ、今、もし相続が発生したらいくら相続税がかかるか?という現状を正しく把握してから生前贈与を含む様々な相続税対策を講じることが大切です。
    朝日税理士法人では相続税試算サービスを行っておりますので、ぜひご活用ください。

                                                                                                                                        (文責:山﨑祐未)

 

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