あなたにも相続税・・・
平成25年度の税制改正(平成27年1月1日以降適用)による相続税の増税ついては、ご存知の方も多いことと思います。この改正によって基礎控除額(財産の価額から控除できる金額)が5,000万円から3,000万円に、また法定相続人1人あたりに加算される控除額も1,000万円から600万円に引き下げられ、多くの方々が相続税を意識せざるを得ないようになりました。国税庁が公表している資料では、亡くなった方の数(被相続人数)は平成26年127万人(改正前)と平成27年129万人(改正後)で1.4%の微増に対して、相続税の申告件数は同5.6万件から同10.3万件へ83.2%増、課税割合にすると同4.4%から同8.0%へと2倍近く増加しています。
このように「身近な税金」となってしまった相続税について、普段税理士と付き合いのない方々の中には、自分で相続税の申告にトライしてみようと考える方もいらっしゃるようです。しかし一般の方が相続税申告を行おうとすると、そこに「財産の時価」という大きな壁が立ちはだかります。
評価の原則は「時価」
相続税法22条には財産の価額について「相続、遺贈または贈与により取得した財産の価額は、その財産の取得(相続)の時における時価により・・・」と規定されています。
「時価」とは「課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額」と規定されており、簡単にいうと「相続した時点で第三者に売却したとしたらいくらになりますか?」という金額です。
しかしそうは言っても、財産を取得した時の価額であれば売買契約書等の資料によって金額を確認できますが、取得から何年も経った財産の「時価」となるとそう簡単にはわかりません。
また上場株式等の相場がある財産や預貯金等であれば証券会社や銀行等ですぐに時価を調べることができますが、土地、建物等の不動産や家庭内にある家具や家電製品等の財産の時価も簡単にはわかりません。
評価額≠時価?
そこで相続税法では納税者の便宜を図るため、「財産評価基本通達」において財産の評価額の具体的な算定方法が定められています。例えば土地は路線価を用いた評価方法、建物は固定資産税評価額を用いた方法などです。しかし、この通達に従って評価すれば安心という訳でもありません。これらの評価額はあくまで相続税を計算する場合に時価と見なしてもらえるものであり、仮にこの通達によって算出した評価額が本来の時価と比べて著しく乖離しているような場合は、「国税庁長官の指示を受けて評価する」と定められています。結局、通達によって評価した評価額が、必ずしも「時価」と見なしてもらえるという訳ではないのです。
終わりに
例えば書画、骨董品などは、同通達では「売買実例価額(同等のものが今いくらで売買されているか)や精通者意見価額(各専門家の鑑定等)を参考に価額を決定する」となっていますが、実際は鑑定評価の依頼先によって金額にバラつきが出てしまい、唯一の「時価」を求めることは困難です。
このように財産一つ評価するにも色々な時価がありますので、相続税の申告を行う際には、やはり身近な専門家である税理士に相談することをお勧めします。
(文責:櫻井紀昌)