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朝日だより

税制改正と相続(朝日税理士法人だより資産税版Vol.84)

2017年11月01日 朝日税理士法人だより 資産税版

    早いもので今年も残すところあと二月となってしまいました。毎年この時期になると、年末に発表される税制改正大綱についての動向が気になり、落ち着かなくなります。ここ数年、各税法は目まぐるしく改正が重ねられ、昨年は常識だった取り扱いが今年は非常識となるなんて事態も珍しくなくなってしまいました。

 相続税については、平成27年に基礎控除引下げを中心とした大改正があったことは皆さんの記憶にも残っていると思います。それまでは相続税について無関心だったような人々をも巻き込み、街には相続税狂騒曲なるものが鳴り響きました。

 実際に改正の影響は大きく、相続税が課税される人の割合は、全国では4.4%から8.0%に跳ね上がり、実に1.8倍強に増加しました。神奈川県を管轄している東京国税局に限ってみれば、8人に1人の割合で相続税を納めるようになったとのデータもあります。

 また、相続税の改正は、多くの人達に相続そのものに関心を持たせるといった効果ももたらしました。自分亡き後の親族の事を考え、生前贈与や財産の整理、遺言などについて真剣に考える人が増え、実際に実行される方も多く出てきました。これは、相続税の増税というものが副次的にもたらせた、非常に喜ばしい効果だと考えています。

 ここでちょっと今年の29年改正を振り返ってみましょう。税制改正大綱が発表されるまでは、相続税に関する改正の目玉は二つであると言われていました。一つは、いわゆる「タワマン節税」に対応するための見直し。もう一つは、広大地の評価方法の見直しでした。

タワーマンションに関する改正は、固定資産税の算定方法が改正されたことにとどまりました。相続税では評価通達に基づいてタワーマンションの評価を行いますが、その額と市場価格との乖離を利用した節税に対応する見直しは見送られました。評価通達には「この通達によって評価することが著しく不適当な場合は、国税庁長官の指示を受けて評価する」といった規定があります。いわゆる「タワマン節税」については、個別にこの規定の適用を判断すべきものであり、極めて真っ当な結果だと考えています。

 広大地とは、1,000㎡(三大都市圏では500㎡)以上の土地の内一定のものをいいます。広大地を戸建て分譲するには、道路や公園等の宅地として利用できない部分が生ずることを考慮して、面積が広くなるほど評価額が減額される仕組みになっています。広大地に該当するか否かで相続税が大きく違ってくることから、広大な土地については、広大地に該当することを立証することに多くの労力を費やしてきました。広大地に該当しさえすれば、面積に応じて比例的に減額率が大きくなる仕組みだからです。しかし、実際に取引される場合には、形状などの違いにより同じ面積でも取引価格が同じだとは限りません。そこで、広大地の評価方法を各土地の個性に応じて形状・面積に基づき評価するものに改めました。同時に、広大地に該当するための要件が明確化されています。この改正によって明らかに増税になるのかは一概に言えませんが、改正前の今年中に広大地について何とか対策をしておこうという動きも一部見受けられます。

 さて、平成30年度の税制改正ですが、噂の段階ではありますが、相続税に関する大きな改正の話は聞こえてきてはいません。各省庁からの改正要望は出揃っていますが、その中にも相続税に関する大きな要望はないようです。過去には、12月になって突然大きな改正項目が上がってくるなどといったこともありましたので、大綱が発表され次第この「たより」で皆様に解説いたします。

 目まぐるしく改正が重ねられることを考えると、今日有効だと考えている相続税対策も、明日有効である保証はどこにもありません。私たちは、目先の有利・不利に囚われるのではなく、皆様が本当に幸せなライフプランを描くことが出来るようなお手伝いすることが使命なのだと肝に銘じてアドバイスをしていくよう努めます。

                                                                                                                                                          (文責: 大澤慎一)

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