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朝日だより

賃上げ促進税制 2022年度税制改正(朝日税理士法人だよりVol.208)

2022年07月01日 朝日税理士法人

 個人所得の拡大を図り、所得水準の改善を通じた消費喚起による経済成長を達成するため(実感はどうでしょうか…)、2013年に創設された所得拡大促進税制について、複数回の延長や要件の改定を経ていることから、適用を検討・実際に適用された法人も多いことと思われます。

 2022年度税制改正において、政府は「成長と分配の好循環」の実現に向けて、賃上げに取り組む企業・個人事業主を応援するため、抜本的に強化するべく、改正がされました。

以下では、その改正内容を確認したいと思います。

 

【中小企業向け】

  1. 適用要件(通常要件)
    雇用者給与等支給額が前年度と比べて1.5%以上増加した場合に、控除対象雇用者給与等支給増加額の15%を法人税額から控除法人税額の20%を上限)できます。
    この点は改正前と変更はありません。
  2. 上乗せ要件
    雇用者給与等支給額が前年度と比べて2.5%以上増加、かつ、教育訓練費の額が前年度と比べて10%以上増加した場合に、税額控除率を+10%上乗せするとしていたのが、前者の賃上げ要件を満たせば税額控除率を+15%上乗せ後者の教育訓練要件を満たせば同+10%上乗せすると改正されています(控除税額の上限を法人税額の20%とする点は改正前と変更はありません)。

 

 つまり、判定方法や計算方法に変更はないものの、上乗せ要件が簡素化されるとともに、賃上げ要件・教育訓練要件の2段階での税額控除が設けられ、税額控除率が最大40%(法人税額の20%を上限)へ引き上げられています。

 中小企業向けの制度は、簡単に申し上げると、従業員への給与等総額を前期比で増加させると、増加させた給与等の一定割合を法人税額から控除できる制度と言えます(正式な用語、要件の検討は顧問税理士や弊法人までお問い合わせください)。

 

【大企業向け】

  1. 適用要件(通常要件)
    新規雇用者給与等支給額が前年度と比べて2%以上増加した場合に、控除対象新規雇用者給与等支給額の15%を法人税額から控除(法人税額の20%を上限)できるとしていたのが、継続雇用者給与等支給額が前年度と比べて3%以上増加した場合に、控除対象雇用者給与等支給増加額の15%を法人税額から控除法人税額の20%を上限)できると改正されています。併せて、資本金10億円以上かつ従業員数1,000人以上の場合は、マルチステークホルダー方針の公表が必要とされています。
  2. 上乗せ要件
    教育訓練費の額が前年度と比べて20%以上増加した場合に、税額控除率を+5%上乗せするとしていたのが、継続雇用者給与等支給額が前年度と比べて4%以上増加した場合という賃上げ要件を満たせば税額控除率を+10%上乗せ教育訓練費の額が前年度と比べて20%以上増加した場合という教育訓練要件を満たせば同+5%上乗せすると改正されています(控除税額の上限を法人税額の20%とする点は改正前と変更はありません)。

 

 つまり、「新規雇用」から「継続雇用者への積極的な賃上げ」に着目点が改正され、2021年度改正前の制度に戻っていることから、計算方法は比較的簡素化されるとともに、税額控除率が最大30%(法人税額の20%を上限)へ引き上げられています。

 大企業向けの制度は、簡単に申し上げると、前期・当期のすべて期間において給与等を支払っている従業員への給与総額を前期比で増加させると、増加させた給与等の一定割合を法人税額から控除できる制度と言えます(正式な用語、要件の検討は顧問税理士や弊法人までお問い合わせください)。

 

 なお、積極的な賃上げの結果として税制措置が利用できるものであり、給与や法定福利費等の固定費の増加、マルチステークホルダー方針の公表等、副作用も認識しつつ、再度、目的と手段を明確化し、使いやすくなった税制を利用・検討されてはいかがでしょうか。

 

(文責:関内本店 國分周)

 

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