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朝日だより

パーパス経営(朝日税理士法人だよりVol.202)

2022年01月01日 朝日税理士法人

 あけましておめでとうございます。

 新型コロナウィルスが発生してもうすぐ2年になります。個人的にはコロナウィルス禍での仕事やプライベートで大人しくしていることに少し慣れてきました。それに加えてワクチンと治療薬の普及や飲み薬の開発も進み、朝日税理士法人本店がある関内も人が増えたように思えます。そんな折、昨年末に新たなコロナウィルス、オミクロン株が発見されたというニュースがあり、全世界で瞬く間に広がっていきました。ウィルスの変異と人間の知恵比べのようで、コロナウィルス禍は当分続きそうですし、まだ予見し得ない試練が待ち受けているかもしれません。

 さて、年末の日経新聞では「企業のPurpose(パーパス)」という言葉が良く出ていました。企業の中で使われるパーパスは「存在意義」と訳されます。自分の会社の社会の中の存在意義を常に考えて仕事に携わる、つまりパーパス経営が大事だというわけです。日経新聞等で大企業のパーパス経営が取り沙汰される背景には、ESG(環境・社会・企業統治)の強化、顧客ニーズや従業員の多様化など社会が急速に変化するなか、ぶれずに貫く自社の存在意義を見つめ直さなければいけないという気運の高まりがあります。このことは私たち中小企業や個人事業主にとっても重要なことです。ところが企業(以下、個人事業を含む)がパーパスに焦点を当てていくのは結構大変なことです。例えば企業の業績が悪くなれば、企業は何をどうすれば業績が上向くのか?と必死で考えます。しかしパーパス経営はそうではなく、なぜ企業が存在しているのかという、「なぜ」を大事にします。『なぜ、うちが存在しているのか?だって、それは儲けるためだよ』という声が聞こえてきそうです。確かに今まで企業はどうすれば儲かるのかを考えてきました。新型コロナウィルスの発生で世界は大きく変わりました。一歩先を読み違えればこれまで成功していた企業も転落してしまいます。変化が激しい時代は何をどうすればの「何」は常に変化していきます。そこに焦点を当て過ぎると企業の軸がぶれてしまい、中で働く人の士気も下がってしまいます。このため、もっと原点に立ち返って「なぜ」自社は存在するのか?に焦点を当てることが重要になってきました。

 私たち税理士や公認会計士は、企業は将来に渡って継続すると教えられ、企業=Going Concern(ゴーイングコンサーン=継続企業の前提)と理解してきました。したがって「売り上げが減少する」とか「利益が上がらない」というのは、企業にとって継続という前提が覆される一大事です。その様な意味において「儲かるために何をするか」という考えはゴーイングコンサーンそのものです。確かにパーパス経営は重要です。しかし、売上がついて来ない理念だけ、つまり「利益」と「パーパス」が結びつかない様では企業ではありません。この「利益」と「パーパス」のバランスをどう取るのかが重要です。言い換えればコロナウィルス禍においては社員の士気(モチベーション)を高めながら、利益を上げていける企業が求められています。

 参考になるのはアルツハイマー型認知症の原因物質を取り除く世界初の治療薬を実用化した製薬会社のエーザイです。彼らは「患者を助けることを第一義とし、その結果として売上、利益がもたらされ、この使命と結果の順序が重要と考える」という内容を16年も前に定款に入れています。定款に入れてある以上、儲けることを優先すれば定款違反となります。パーパスが先で利益が後です。ものすごい覚悟です。彼らはコロナウィルス禍ではなくずっと以前からこのことに気がついて企業の憲法である定款に書き入れていたのです。

 そもそも人は社会への役立ちをもって自分の存在意義を感じ、生きる喜びを得ます。社会の中で企業もその役立ちが大事なのです。なぜうちの会社は社会に存在しているのか?本当に役立っているのか?自分の会社が社会の需要に正しく応え、社会に貢献していれば自ずから利益はついてきます。

年が明け、新型コロナウィルスの脅威の基でますます混迷の度合いが深まり、変化が読めない社会の中で、先を読むよりも自分の会社の存在意義を今一度確認してみませんか?今年皆さんにお会いする際には『皆さんの会社(事業)のパーパスは何ですか?』と是非伺わせて下さい。因みに朝日ビジネスコンサルティンググループのパーパスは「クライアント事業の問題解決」です。

それでは今年もよろしくお願いいたします。

朝日税理士法人 理事長 石井孝雄

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