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朝日だより

生前贈与が大きく変わるかもしれません(朝日税理士法人だより資産税版Vol.130)

2021年09月01日 朝日税理士法人だより 資産税版

生前贈与の活用

 朝日税理士法人だより資産税版でも何度か取り上げたこともありましたし、相続税に関するセミナーなどでも必ず取り上げられる相続税対策の一つに「生前贈与の活用」があります。筆者自身も、生前に次の世代の親族に自らの財産を有効に活用してもらうために、そして相続税の負担を軽減するためにも有効で安全な相続対策として「生前贈与の活用」を積極的にお勧めしてきました。

 生前贈与の活用については資産税版VOL.114で詳しく解説させていただいていますのでそちらを参照していただくとして、今回はその生前贈与に対する税制が大きく変わってしまうかもしれない、というお話をさせていただきたいと思います。

令和3年度税制改正大綱

 毎年年末に公表される税制改正大綱には、プロローグとして「基本的考え方」が必ず記述されています。その時その時の状況に対処するために必要な税制上の措置を検討し、改正すべき方向性の基本的スタンスを述べるとともに、それに沿って各税目に落とし込んだ改正の概要が説かれていきます。更に、その年度の改正項目には含めることはしないけれど、今後検討を進めるべき課題として記述されるものもあります。その年度の改正の趣旨を理解するとともに、近い将来の改正の方向性を知る上でも非常に重要な前文です。

 令和3年度大綱の基本的考え方を読み進めると、「相続税・贈与税のあり方」のなかに「資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税に向けた検討」といった記述がありました。現在の制度では財産の分割贈与による租税負担軽減を防止するには限界があるとし、最後には「本格的な検討を進める。」としており、与党税制調査会の本気度を垣間見ることが出来ます。

 日本経済の活性化の観点から、高齢世代が保有する財産の若年世代へのシフトを促進するための税制の構築を掲げてきたことと矛盾するとも思われますが、数年前から資産移転を公平にすべきとの観点から贈与税の暦年課税制度の見直しを検討してきていたと言われています。

改正の方向性として考えられること

 改正の可能性としてまず考えられるのは、毎年非課税となる贈与額110万円、この基礎控除額の引き下げです。毎年100万円ずつ贈与すれば贈与税の心配はいらないよ、といった話はよく聞くでしょう。極端な話として、110万円の基礎控除額がゼロになるなんて話も巷には飛び交っているようですが、流石にいきなりの基礎控除廃止は非現実的といえます。

 現時点で考えられる改正は、相続税に取り込む贈与期間の見直しです。現行の相続税では、生前贈与のうち死亡前3年以内に相続等により財産を取得した者に贈与された財産は、相続財産に加算されて相続税の計算が行われます。この3年の期間を5年、7年、10年、15年、………、全期間と延ばしていくことが予想されます。つまり、せっかく生前贈与により子供たちに財産の移転を行ったとしても、最終的にはその贈与はなかったものとして相続税が計算されることになります。

 確かに3年という期間は諸外国と比較すると短いということも言えますが、相続税の計算方法や基礎控除額など様々な違いもあり、この期間だけを比較して議論をすることは誤りだと考えています。慎重な改正論議が望まれるところです。

今出来ること

 生前贈与に関する改正は急激に行われる可能性は低いとは思いますが、増税傾向にあることは間違いないと思われますので、生前贈与を検討されている方は時期をより早めて行うことを検討されても良いかもしれません。

(文責:大澤 慎一)

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