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朝日だより

今回は見送り!~現行の贈与制度をおさらいしよう~(朝日税理士法人だより資産税版Vol.134)

2022年01月01日 朝日税理士法人だより 資産税版

 昨年12月10日、令和4年度与党税制改正大綱が発表されました。詳しい内容については、メール配信vol.237及び朝日税理士法人ホームページ上にその概要を記載しておりますので、そちらをご覧ください。

 結果として、今回は相続税と贈与税の一体化についての大きな改正はありませんでした。しかし、“現行の相続時精算課税制度暦年課税制度のあり方を見直すなど…”と来年以降の改正に積極的な姿勢がみられます。そこで、今回はこちらの2つの課税制度についておさらいしてみましょう。

 

--暦年課税制度とは--

 「年間110万円までの贈与なら非課税」と言われる制度です。もらう側に毎年110万円の非課税枠があるため、例えば父から100万円、母から100万円の贈与があった場合には、超過額90万円に対して贈与税9万円がかかります。もし相続があった場合には、亡くなった日前3年以内に被相続人から相続人等へ行った暦年贈与があれば、相続財産へ加算されます。今後の改正では、遡及期間が5年、10年、15年以内…と長くなる可能性があります。

 

--精算課税制度とは--

 「2,500万円までの贈与なら贈与税はかかりません」これが相続時精算課税制度です。あげる側(60歳以上の親等)ともらう側(20歳以上の子等)のペアで精算課税の届出をすると、以後の両者間の贈与は暦年課税には戻れません。この制度では、例えば3,000万円の贈与があった場合、超過額500万円に贈与税率20%(贈与税100万円)がかかります。2,500万円の控除額を使い切ると、以後の贈与には一律20%の贈与税がかかります。そして、贈与者が亡くなった際に、今まで精算課税で贈与された分を全て相続財産へ持ち戻し、相続税と贈与税を精算します。精算課税は、相続税と贈与税の一体課税を表した制度と言えます。

 使いようによっては非常に有効な手段となる精算課税ですが、贈与から相続発生までの期間が空いてしまうと、思わぬ問題も起こります。

 

  1. 持ち戻し価額が割高になった?!

 相続時に持ち戻す価額は「贈与時の時価」です。例えば、土地を贈与した場合には当時の路線価による評価額を用います。これが運悪く、相続発生と同時期にリーマンショックやコロナ禍のような不測の事態が起こり、不動産の市場が著しく下落したとしても、今の時価で再計算することはできません。あくまでも過去の時価を用いて、現在の相続税を計算することになるのです。仮に、納税資金の工面のため、急いで売却する必要があるときなどは、評価額と売却価額が逆転することも有り得ます。

2. 延納期間が短い?!

 相続税は金銭一括納付が原則ですが、金銭納付が難しい方向けに分割納付(延納)が認められています。この延納期間は、相続財産に占める不動産割合が75%以上の場合に最長20年となりますが、過去に精算課税で不動産を取得していたとしても、この割合の計算に含めることができません。たとえ、精算課税で取得した財産が不動産のみだったとしても、その不動産にかかる相続税は最長5年で納めきらなくてはなりません。そのため、贈与税の心配は無くとも、相続時の納税計画について見当を付けておく必要があります。ちなみに、精算課税で取得した財産は、物納(モノで納める)の対象とすることはできません。

3.現金贈与はNG?!

 精算課税で贈与を行うと、相続時に手許にない財産も加算対象となります。仮に自宅購入のための現金を贈与した場合などは、いざ相続の際に、持ち戻した贈与額に対する相続税が払えないというリスクがあります。

 仮に今後、生前贈与がほとんど持ち戻される時代が来るとなると、懸念されるのは相続発生時の納税計画です。10年、15年前にもらった財産について、相続時に納税できずに泣く泣く財産を手放すことになりませんよう…今後の動向を注視しながら、朝日税理士法人は今年も皆様のお役にたてるよう精進してまいります。

(文責:菊永奈津姫)

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