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朝日だより

インボイス制度~不動産賃貸業への影響~(朝日税理士法人だより資産税版Vol.133)

2021年12月01日 朝日税理士法人だより 資産税版

“インボイス制度?” 「消費税の話らしいが詳しいことはよく分からない」という方も少なくないのではないでしょうか? 今回は、インボイス制度が不動産賃貸業に与える影響をご案内します。

 

インボイス制度とは

消費税の税額計算をインボイス方式とする制度です。インボイス方式とは、正式には「適格請求書等保存方式」といいます。「適格請求書」には 
①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号

②取引年月日

③取引内容

④税率ごとに区分して合計した対価の額及び適用税率

⑤税率ごとに区分した消費税額等

⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

が記載されます。

 

①の登録番号は、令和3年10月1日以降開始されている登録制度に基づき付番されます。

消費税の適格請求書発行事業者として登録されていない事業者は、請求書に登録番号を記載することができません。そして、令和5年10月1日以降は登録番号の記載のない請求書等に係る経費の支払いは仕入税額控除の対象となりません(※経過措置があります)。

これまで免税事業者であった事業者も「適格請求書発行事業者」に登録できますが、登録をすると消費税の課税事業者となります。(詳細は朝日だよりVol.196をご参照ください。)

 

インボイス制度の目的

消費税はその導入当初から「益税問題」が指摘されていました。益税問題とは、国に納められるべき消費税相当額が、事業者の利益になってしまうことを指します。今回のインボイス制度導入は、この益税問題の解消のためと言われています。

 

不動産賃貸業への影響

不動産の貸付のうち、住宅や更地の貸付は消費税の非課税売上です。一方で店舗や事務所、駐車場の貸付などは課税売上となります。店舗や事務所の貸付を行っているものの、年間の課税売上が1,000万円以下であるため、消費税の免税事業者となっていた不動産賃貸事業者が今回の改正の影響を受けることになります。

 

【具体例】

店舗を賃借して営業している事業者にとって、これまで貸主が課税事業者であれ免税事業者であれ、支払った家賃は仕入税額控除の対象となり、自身が納税する消費税を引き下げる効果がありました。しかしインボイス制度が導入されると、支払家賃について仕入税額控除を受けるためには、貸主から適格請求書の交付を受けなければなりません。貸主が免税事業者で適格請求書を発行することができないと、支払家賃に係る消費税相当額は仕入税額控除の対象とできず、店舗の賃借人である事業者はその分の消費税を多く負担することになります。結果として、家賃にかかる消費税を差し引くことができないことを理由に、退去を検討されるかもしれません。または、消費税に相当する金額の家賃の値下げを求められるかもしれません。

これは貸店舗だけの問題ではなく、貸事務所や駐車場も同様です。免税事業者である不動産賃貸事業者にとって、インボイス制度の導入は、店舗・事務所・駐車場など消費税の対象となる賃貸物件の競争力向上につながる可能性があります。

 

インボイス発行事業者の有利・不利判断

免税事業者が課税事業者を選択してインボイス発行事業者となった場合でも、居住用建物だけを賃貸しているようなケースでは課税売上がほとんど発生しないため、消費税納税額が少額になることも考えられます。このため前述の競争力向上のために、少額の消費税を納付した方が良いという判断もあります。

一方で近々に建物を売却する予定がある場合などは注意が必要です。建物の売却は課税売上ですから、課税事業者の場合、建物の売却代金の10%が課税売上となり消費税納税額を増加させます。

 

おわりに

インボイス発行事業者(課税事業者)になることによる有利・不利を想定し、十分な検討が必要です。 インボイス制度の影響につきましては、朝日税理士法人にご相談ください。

(文責:中村和仁)

 

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