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朝日税理士法人のブログを掲載します。

◆ 紙での保存はNG ◆

2022年4月11日 BLOG

◆ 紙での保存はNG ◆

 

Q:電子請求書は紙ベースで保存できなくなるってホントなの?

 

A:令和6年1月1日からは電子保存が実質的にスタートするよ

 

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【請求書のペーパレス化が進む】

ある会社の女性経理担当者が、月末の請求書発行に追われ、物凄いストレスを感じていた。

しかし、ある日を境に、そのストレスが全く無くなり、女性経理担当者はとても穏やかになった・・・

このようなCMを知っている方は結構いらっしゃるのではないでしょうか。

 

さて【問題】です。

「女性経理担当者は何故穏やかになったのでしょうか」

 

【答え】

それは「これまで請求書を一枚一枚紙で印刷して→それを請求先ごとの封筒に入れ→それを郵送する」といったとても手間のかかる作業を一切廃止し「インターネットを用いて自動にて請求書を送るようになった」ためです。

 

これにより

・ペーパレスが図れ

・郵送料も無くなり

・作業時間も大幅に削減

といったメリットが生じます。

 

今日、多くの会社では紙の請求書が使われていますが、このようなメリットがあるので、大半の請求書などがインターネットを用いた電子化になるのは時間の問題かと思います。

 

【税務署側の悩み】

ここはある税務署の会議室

上司:「請求書などの書類がどんどん電子化されている。これは実に困ったことだ」

部下:「どうしてですか」

上司:「君は税務調査の際、電子化された請求書などをどうやって確認するのだ」

部下:「納税者に頼んで印刷したものを確認しています」

上司:「それが困るんだ」

部下:「何故困るのですか」

上司:「納税者において電子のモノを画策して、それを印刷する可能性があるではな    いか」

部下:「あっ・・確かにそれはあるかもしれませんね」

上司:「うーん・・なんとかしなければ」

 

このような会話があったか否かはわかりませんが、当局は税務調査の際、電子で受けた請求書などを納税者がプリントアウトし紙にて提示する際、画策して不正することを心配している様子です。

そこで、この度「電子で受けた請求書等については、電子にて保存すべし」というルールを定めました。

 

【改ざん防止のための方法】

そのルールは大きく分けて2つあります。

その1つが「真実性の要件」というもので、「真実」・・・つまり不正をしていないということを担保する要件です。(もう1つは「可視性の要件」というモノです)

 

今回はこの要件について、ご案内します。

この真実性の要件には4つの方法があり、そのうち1つ満たしていればOKです。

(1)まず1つ目は、電子請求書を受ける場合はその請求書に「タイムスタンプ」が付いているものを得ること。

「タイムスタンプ」とは、電子の消印のようなモノで、それが付された電子請求書等は、絶対に改ざんが出来ないというモノです。

タイムスタンプには日付や時間が付されるので、これが付けられると、その時間以後は改ざんがなされていないという証拠になります。

よって「タイムスタンプ」付きの請求書等を入手すれば、その請求書等の真実性が保証されます。

 

(2)入手した電子請求書等に「タイムスタンプ」が付されていない場合は、一定の期間内に、入手した側で付すことでOKになります。これが2つ目の方法です。

この一定の期間とは、入手してから7営業日とのことです。(例外あり)

「7営業日間であれば、改ざんする時間はとれないだろう」というのが当局の判断のようです。

 

(3)前述したとおり、タイムスタンプは改ざん防止には「もってこい」ですが、入手するためのシステム環境を整えるのに手間とコストがかかります。

よって「タイムスタンプを使いたく無い」という意見があります。

当局はこれに対応し、3つ目の方法を準備しました。

それが「修正や削除の履歴が残るシステムもしくは修正削除が出来ないシステムを採用すること」というモノです。

電子請求書等は、サーバーやクラウド等に保存されます。

その保存された、電子請求書等について、何等かの事情により修正や削除をした場合、その履歴が確認できれば、その修正や削除が改ざん目的であったか否かを確認することができます。(修正や削除ができないシステムであれば、改ざんの余地がないことになります)

このようなシステムであれば、タイムスタンプが無くとも真実性が保証できます。

 

(4)「当社は紙の請求書が殆どで電子はほんの僅かだからタイムスタンプや上記(3)のようなシステムは時期早々である」という会社や事業者の方もいらっしゃるかもしれません。

そのような方のために、当局は4つ目の方法を準備しました。

それは「修正削除に関する規程を設け、それを運営する」というモノです。

規程さえ設けて運営すれば、タイムスタンプもシステムも使わなくてOKということです。

「でも、規程ってどうやって作るの・・」と心配される方、ご心配なく!

国税庁のHPなどに、この規程のサンプルがありますので、それを参照すれば、比較的簡単に作ることができます。

 

以上4つの方法が準備されています。

前述したとおり、4つのうち1つが満たされていれば真実性は確保されたことになります。

もちろん2以上の方法を組み合わせても構いません。

たとえば、タイムスタンプ+規程で運用することもできます。この場合は7営業日以内に付すタイムスタンプの期間が、2ヶ月+7営業日に延長できるという特典もあります。

 

【ほぼ全ての会社や事業者が対象となる】

この制度は、令和6年1月1日より実質スタートします。

まだ、1年以上の期間がありますが、それでも「タイムスタンプを使うのか、それともシステムを導入するのか」といった様々な検討があり、なるべく早く準備をする必要があります。

一方で、「当社は当面、電子で請求書等を発行しないし、電子で請求書等の発行を受けることも無いので、関係無い」という会社や事業者の方もいらっしゃるかもしれません。

そんな方へ質問があります。

「貴社は、出張等の新幹線や航空機チケットはネットで購入することは、ありませんか」

「貴社は、書籍などをネットで購入したことは、ありますか」

これについて「Yes」と答えた方・・・その方にとっても、この制度は大いに関係があります。

何故なら、これらの請求書等は紙ではなく電子で受けます。このような請求書等も、この制度の対象になるからです。

そうなると、殆どの会社や事業者の方が対象となる制度といっても過言ではありません。

令和6年1月1日はあっという間に訪れます。なるべく早く準備をすることをお勧めします。

(文責:社員税理士  小竹 勝)

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