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朝日税理士法人のブログを掲載します。

◆ 締め切り過ぎても間に合います ◆(税務ミニ話)

2020年8月12日 BLOG

◆ 締め切り過ぎても間に合います ◆

Q:「免税事業者に戻りたい」「やっぱり課税事業者になりたい」

A:本当はダメだけど、今回は特別に認めてくれるよ

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【消費税の還付を受ける予定であったのに】
甲社長が営むA社(12月決算)は、これまでずっと年商1000万円以下でしたが今年度(令和2年度)は増収を目指し大きな設備投資を計画していました。
その話を知人にしたところ
「大きな設備投資をするなら、課税事業者選択届出書を事前に出しておいた方がよい」
「そうすれば、設備投資の際に支払った消費税の大半を還付してもらえる」とアドバイスを受けました。

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知人の話によると
    ・年1000万円以下の事業者は消費税の申告をしなくてよい。
          ↓
    ・でも、大きな設備投資をする場合、その導入に際し負担した消費税は控除も還付もされず、切り捨てられる。
          ↓
    ・これについて控除や還付を受けたい場合は
      「私は本来免税事業者ですが、消費税については、申告します」
      ということを示す「課税事業者選択届出書」を税務署に提出すれば、これ(控除や還付)を受けることができる。とのこと・・・
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そこで、甲社長は、令和元年12月にこの届出をしました。
その際知人より
「この届出は一旦出したら、2年間は続けなければならないので注意してくださいね」と念を押されました。

【コロナの影響で、それどころではなくなった】
ところが、A社は、コロナの影響で減収を余儀なくされ、先月の売上は前年に比較して半減してしまいました。このような状況を受け、計画していた設備投資も断念せざるを得ませんでした。

「設備投資ができないのであれば、課税事業者選択届けなど出さなければよかった」
「逆に、しなくてもよかった消費税の申告をして納税までしなければならない」
・・・(まったく踏んだり蹴ったりだ)
甲社長はがっかり肩を落としてしまいました。

これを聞いた知人は、この程更新された国税庁のHPを示しながら言いました。
「安心してください。その届出は無かったことにできますよ」

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更新されたHPによると
   ・届出は、一旦提出すると2年間は継続して消費税の申告をしなければならない
          ↓
    ・でも、コロナの影響を鑑み特別な措置を設けた
          ↓
  ・その措置とは、今年の2月~来年の3月までの間のうち、どこでもよいので1月間の売上が前年と比較して50%以上減収していれば、その届出をなかったことにできる(12月決算であるA社の場合は、令和2年1月 ~ 令和2年12月までのいずれか1ヶ月について50%減収すればよい)
          ↓
    ・これをするには、その申告期限までに税務署に対して手続きをすればよい
      (12月決算であるA社の場合は、令和3年2月末までに手続きをすればよい)
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このようなことが掲載されていました。

「一旦、選択の届出をした以上、これを撤回することなどできないはずなのに、どこか1ヶ月の売上が半減すれば、その届出は無かったことにできるのか」
「しかも、申告期限までに手続きをすればイイのだから、12月決算の当社の場合は・・・来年の2月が申告期限だから、決算後2ヶ月間じっくり考えて、その上で判断しても間に合うんだ」

「設備投資が無くなったのだから、消費税の控除や還付はまず無いと思うが、今後、  コロナが当社の決算にどのような影響を与えるか見極めよう」
「その上で、来年の2月までゆっくり考えて手続きをすればよい」

甲社長は「ホッ」としました。

【当初は免税で行こうとしたが・・】
卸売り業を営むB社(3月決算)の乙社長は、昨年の暮れ海外の見本市である商品を見つけました。
「これはめずらしい、大手商社では参入していない商品だ」
「きっと、爆発的に売れる」
そう思い、勝負をかける意気込みでその商品を大量に仕入れました。

B社は設立したばかりで、資本金も小さく、消費税においては免税事業者でした。
だから「本年度はこの商品が爆発的に売れても、消費税は納税しなくてもよい」と思っていました。
ところが、コロナの影響で大量に仕入れた商品は全く売れず、今月の月商も前年に比較して大幅に減収してしまいました。
「こんなことなら今期が始まる前に、課税事業者の選択届を出しておけばよかった」
乙社長はがっかりしました。

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その理由は・・
    ・海外から輸入した際に税関で納付した消費税は、申告の際に売上にかかる消費税から引くことができる。(今年度はコロナの影響で大幅に減収になるから、売上 にかかる消費税から引ききれず、その分は還付されるはずである)
          ↓
    ・でも免税事業者の場合は、消費税を申告しないのだから引くことができない。
      (よって還付もされない)
          ↓
  ・還付を受けるためには、今年度の始まる前(令和2年3月31日まで)に「課税事業者選択届」を出す必要があったが、既にその期限が過ぎてしまった。
          ↓
    ・だから、いまさら間に合わない・・・(ガッカリ)
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【大丈夫、今からでも間に合います】
これを聞いた知人は、国税庁のHPを示しながら言いました。
「安心してください。その届出は出したことにできますよ」

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HPによると
    ・確かに(原則として)「課税事業者選択届」は、前期末日(その事業年度の開始の日の前日)までに提出しなければならない
          ↓
    ・でも、コロナの影響を鑑み特別な措置を設けた
          ↓
    ・その措置とは、今年の2月~来年の3月までの間のうち、どこでもよいので1月間の売上が前年と比較して50%以上減収していれば、例え今期に入ってからであっても(前期末日後であっても)提出することで間に合う。
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このようなことが掲載されていました。

「それならば、今から届出しても、課税事業者になることができて、大量に仕入れた商品の消費税を引くことや還付を受けることができるんだ」
乙社長は「ホッ」としました。

その様子を見て知人は更に嬉しいことを教えてくれました。
「課税事業者選択届」を出すと、最低2年間は、それをやめることはできないという制約がありますが、今回に限ってはその制約はありません」
「御社は、今後も年商は1000万円を超えることが無いと伺っているので、来年は一定の手続きをすることで、免税事業者に戻れますよ」

これを聞いて乙社長は
「今期は控除や還付があっても、来年度は課税事業者として消費税の申告をしなければイケナイのかと思っていたが、その制約が無くて安心したよ」

乙社長は再び「ホッ」としました。

【月商が半減したら、検討しよう】
消費税にかかる様々な届出は、その届出にかかる制度を受けたいと思っている課税期間の前日までに提出をしなければなりません。
しかしながら、今回のコロナの影響で月中の売上が大幅に減少した場合は、期中であっても更には、期後であっても申告期限までであれば、遡って届出を出すことや一旦提出した届出を無かったことにできるようになりました。

消費税の還付を受けるつもりで課税事業者を選択したが、やっぱり免税事業者に戻りたい場合や免税事業者であるが、消費税の還付を受けたいと考えている事業者の方は是非検討をして見てください。


(文責:代表社員税理士  小竹 勝)

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